ゆうた

フォーガットンのゆうたのレビュー・感想・評価

フォーガットン(2004年製作の映画)
4.0
事故で息子を失った悲しみから立ち直ろうとする母親。しかし周囲からは「そもそも息子はあなたの想像上の産物なのでは?」という扱いをされる。
果たして息子は存在していたのか、それとも…というお話。

これはねぇ、かなりいいですよ。
かなり好みです。
おもしろいマンガや映画を評するさい「先の読めない展開」とか言うけど、この映画くらい先が読めない映画ってあるのか?って思う
序盤はよくあるニューロティックスリラー。要するに、「主人公の母親は本当に狂っているのか、それとも周囲が嘘をついていて母親は正気なのか」で物語が進んでいく。
ニューロティックスリラーはこの「おかしいのは私?それとも周り?」の狭間で主人公を混乱させ、それを楽しむものだから、できる限り宙吊り状態のままストーリーを進めるものだけれど、本作はこの型を突き破り、母親は完全に正気であることが早めに判明する。
そして最後は一気にSF的展開に突入。
「子どもたちは生きてるわ、誘拐されたのよ」。
まさかこの言葉から本当に宇宙人に着地するとは誰にも予想できないよ。
こういういい意味でバカバカしいというか、ジャンルの枠をぶち破っていく作品大好きです。
『Xファイル』を超圧縮して一本の映画にまとめたような感じで、これは雑なのではなくスピード感があると言いたい。
ニューロティックスリラーの傑作は色々あるけれど、結局のところ主人公の頭の中が問題な訳だから、いくら途中でアクション入れたりしても作品世界がこじんまりしがちなんだけど、なんせこれは地球規模だから。しかも誰も本当のところは理解できていない実験ですよ。
この気宇壮大なスケールのデカさ。
そして宇宙人にもきっちりノルマがあり、失敗したら上司にお仕置きされるという厳しさね。
やっと娘のことを思い出した時の俳優の演技良かったですね。こんなに幸せな瞬間がいっぱいあったんだって感じ。「思い出した!思い出したぞ!」って連れ去られそうになる主人公に何度も呼びかけるところも良かった。個人的にはここでかなりキャラクターたちに感情移入できました。
(おそらくは)シングルマザーとシングルファーザーとして出会いなおし、そこはかとない恋の予感を漂わせて終わるラストも良かった。
ハゲの旦那は完全にいない人扱いになってるけど、あいつは息子のことも主人公のことも忘れてるダメなやつだからやむなし。
宇宙人的にもあいつはギルティっていう判断。
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