ウシュアイア

ポエトリー アグネスの詩(うた)のウシュアイアのネタバレレビュー・内容・結末

3.4

このレビューはネタバレを含みます

2012年に鑑賞
[あらすじ]
初老の女性ミジャは、介護ヘルパーの仕事と生活保護で、釜山で働く娘の代わりに、中学3年生の孫ジョンウクを一人で育てている。身体の不調と物忘れのひどさから受診した病院からの帰り道、川で投身自殺を図った少女の母親の慟哭を偶然目にする。
自身の体調不良と相まってやりきれない思いとともに、少女時代に詩の才能を褒められたことをふと思い出し、街の文化教室の作詩講座を受講することにする。
ミジャはなかなか自分の想いを言葉にできずにいたところ、ある日、ジョンウクの友人の父親から仲良し6人組の保護者の集まりに呼び出され、6人組が少女の自殺に関わっていたことを知り、高額の慰謝料の支払いがミジャに降りかかってくる。そして、ミジャ自身の病状も深刻であることを知らされ・・・

<感想>
タイトルのアグネスというのは、投身自殺を図った少女の洗礼名で、そのことがわかる序盤でもう大方の観客は気がつくが、(若干のネタバレになるが)、最終的にミジャが書いた詩というのは、アグネスの想いをミジャが想像して書いた詩であり、そこにたどり着くまでの軌跡を描いたのが本作である。

『ハーモニー 心をつなぐ歌』でもそうであったが、この手のシリアスなヒューマンドラマは、多少やりすぎ感は否めないが、骨太の作品が多い。内容的に重いが、日本ならば、『八日目の蝉』(未観賞)や『悪人』に通じる作品だと思う。

また、この映画を通じて韓国の社会通念みたいなものも垣間見ることができる。韓国の親たちの子への過保護ぶりや期待は日本とはレベルが違う。少女の自殺を知ったミジャは孫に「将来がある身なのに何で自殺なんか」と
問いかけたり、6人組の保護者の集まりでは、「将来ある子どもたちのため」という一種のスローガンのもとに、学校とともに後始末をする。
韓国では、すべての子どもは「将来ある身」として期待されている存在と
みなされているということがよくわかる。映画ではさらに誇張されてえがかれているのか、親たちは、子どもたちが犯した罪に対する償いや罰に対する言及は一切ない。さらに、後始末の話し合いの場や示談がまとまったところでビールを飲み、亡くなった女の子が背が高くて美人だったら、云々というひどい話までしているのだ。極端なのかもしれないが、相当病んでいる。

また、この作品で、ミジャを演じた女優はものすごい地味な役どころでありながらも、過不足なく演じているあたり、大女優なんだろう、ということがすぐにわかる。

万人ウケする作品ではないが・・・観て損はないだろう。
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