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ポエトリー アグネスの詩(うた)のodyssのレビュー・感想・評価

3.7
【可愛いおばあさん、または韓国映画の成熟】

(以下は10年前に某映画サイトに投稿したレビューです。時代性を加味してお読み下さい。某サイトは現在は消滅していますので、ここでしか読めません。)

私は韓流ファンではないし、韓国映画をそんなに見ているわけでもないのですが、この映画を鑑賞して、韓国映画も成熟期にさしかかっているのかもと思いました。

この映画を筋書きだけで説明しても、その味はよく分からないでしょう。また、内容からしてテーマ性を前面に押し出すことも可能なはずですが、製作側はそれも避けている。淡々とした、そしてさりげない、しかし部分的には過激な展開のうちに、いくつかの問題が示されるのですが、我々自身の人生がそうであるように、問題とは我々が強く意識しないとはっきりとした形にはならないものなのですね。この映画を見ていて、そんなことを考えました。

祖母と孫が二人で暮らしている。孫の母(祖母の娘)は、離婚して子を母に預けたまま遠くの町に働きに行っているのですが、仕送りもしてこない。祖母と孫はなんとか暮らしています。そこに孫が学校で事件を起こして・・・・というふうに筋書きが進みます。

けれども孫がいわゆるワルに描かれているわけではない。多少自堕落ではあるけれど、今どきのよくいる男子中学生といった印象です。

祖母は、アルツハイマーの気があるけれど、なお詩作を始めようとしている。人生の黄昏期に入りながら、黙って老いていく気にはなれないのです。

この祖母を演じるユン・ジョンヒが、老齢ながら可愛くて魅力的です。私は日本女優では南果歩さんが好きなんですが、南さんが老いたらこんな感じかなと(南さんは母親が韓国人だといいます)。このおばあさんのセックスシーンがあるのですが、うーむ、なかなか・・・です(上で「部分的には過激な」と書いたのはこういうシーンがあるから)。

また、おばあさんが通う詩作教室やそれとは別の詩を朗読する会のメンバーには、美形の女性が多い。まあ、脇役だって女優が演じているんだからとは思いましたけど、そういうさりげないところでも楽しめる映画です。
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