ベカオースター

ポエトリー アグネスの詩(うた)のベカオースターのレビュー・感想・評価

4.0
映画には観るべきタイミングがある。作品が己が心情と寄り添う時に運命を感じる。今まさにユン・ドンジュ詩集を持ち歩き何度も読んで韓国詩に興味持つ自分にとって、友人がこの作品を勧めてくれたことは奇跡に近い。一編の詩を綴りたいと願い世界の見方を変え情景の恩恵たる言葉を探す時、まだ若き祖母の目に映るのは美しさだけで、けれど日常は醜悪さを見せつけ病理は単語を奪う。零れ落ちる記憶と対峙しながら彼女は盗んだ遺影に想いを込めて詠う。過去作であれだけ禁忌に踏み込み過激な表現を追求した巨匠イ・チャンドン作品なのに派手な絵も罵声も慟哭も禁断も驚愕も無く穏やかな河の流れのような静謐な残酷。そして我が涙も河に変わる。