真魚八重子

ポエトリー アグネスの詩(うた)の真魚八重子のレビュー・感想・評価

4.0
とかくこの世はままならぬ。
主人公ミジャは一人で勝手にお喋りをしてくるので、途中で他ごとをするふりをして、話を打ち切らなければならないタイプの人。しかしアルツハイマーにかかり言葉が消えつつある今、詩を書こうと思って教室に通い、メモを取る。
孫と二人暮らしで生活保護を受けているが、孫の同窓生の少女が自殺する事件が起きる。その原因に、孫とその仲間たちが関与しているらしい。

いつも美しい景色の中を歩いている。草むら、木々、河原、天候も複雑に変わる。ミジャは示談の話が苦手だ。少女の命をお金に換算するという、信じられない企みから逃げたい、と自然に思うのだろうし、周囲の人々からは、それは現実を直視していない、とんちんかんなおばあさんに見えるだろう。ミジャの感受性の産物とは誰も考えない。

こんなに美しいものが世に溢れているのに、美しいものだけを愛しては生きていけない。

ミジャは詩の席で猥談をする男も苦手とする。だがそれは正義感が強く、人間の醜悪さも猥歌で受け入れる、清濁併せのんだ刑事である。
真魚八重子

真魚八重子