rage30

ポエトリー アグネスの詩(うた)のrage30のネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

孫の性犯罪を知ってしまう祖母の話。

真実と向き合う話を描き続けているイ・チャンドン監督ですが、本作で描かれる真実は孫が起こしたレイプ事件。
主人公は事件と向き合う過程で、日常に潜む性暴力や女性を利用し搾取する性差別に遭遇します。

介護先の老人がバイアグラを飲んで迫ってきたり、詩の朗読会では下ネタ交じりの冗談を言う奴がいたり。
加害者の父親達は、女性である事を理由に主人公と被害者の母親を会わせようとするわけですが、女性同士なら理解出来ると言うのなら、被害者の気持ちも主人公は理解出来ると、何故気付かないのか…。
示談後に酒を飲んでたりと、まったくもって被害者の事を考えていないんだな~という事が伝わってきましたね。

そんな男達とは対照的に、主人公は詩の講座で教えてもらった様に、事件を孫を被害者を見つめ、彼女なりの答えを探します。
最終的に孫は警察に渡し、自身はおそらく自殺したのでしょう。
事件と誠実に、真っ正面から向き合ったが故の、あまりにも厳しい結論。
でも、この答えに辿り着いたからこそ、主人公は被害者の心情を理解し、詩を生み出す事が出来たのだろうし、被害者に負い目を感じる事もなくなったんじゃないかな。
それは、ラストの被害者の表情が物語っている気がします。

「子供のレイプ事件を揉み消す話」という意味で、個人的には『プロミシング・ヤング・ウーマン』を想起したりもしたし、フェミニズム映画として見てしまいました。
孫のレイプ事件にしろ、女性を軽視する差別的な価値観が影響してないとは言い切れないわけで、まずはそこから変えないとね。
イ・チャンドン監督が2010年の段階で、このテーマを選んだ事にも驚かされましたし、描くべきテーマは既に描いているからこそ、寡作なのかもしれません。
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