歌子

ポエトリー アグネスの詩(うた)の歌子のネタバレレビュー・内容・結末

3.6

このレビューはネタバレを含みます

66歳のミジャは半身不随の老人をパートで介護しながら、中3の孫息子と2人で暮らしている。彼女は物忘れがひどく、病院でアルツハイマー病の初期と診断される。時に現実を見失いがちになる彼女は詩作に励もうと市民講座に通い、美しさとは何か探し詩を作ろうと試みていた。
一方で、冒頭場面で川を流れてくる少女の遺体を映し、ミステリードラマの要素も帯びる。その無縁にみえた事件が、孫と絡んでいると知ってから、ミジャは彼女が詩作を通して求める「美しいもの」とは対極の見たくない醜い現実に巻きこまれていく・・・・
美しいものしか見たくない、詩の本質ではないと決めつけるミジャの世界はいつまでたっても、本物の詩を生み出す世界に辿り着けないという感じが絶妙で、生活保護を受けながらもおしゃれに身を飾っているミジャの佇まいはちょっと浮きまくっています。
集団レイプして自殺に追い込んだ女子中学生の遺族に対する、
和解金の相談をする保護者たちの話し合いの席でも
す~~~っと外に出て、他人事のように花を眺める場面は象徴的でした。
老人の性欲、未成年の性犯罪、ミジャの美しい世界とは間逆な醜い世界は容赦なく押し寄せてきます。
そんななかアグネスという自殺した少女の洗礼名ともなるアグネスという生徒への想いが、ミジャの何かを変えていきますが、ラストの彼女の詩がその答えを表現している作りとなっていました。
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