キューブ

ポエトリー アグネスの詩(うた)のキューブのレビュー・感想・評価

3.0
 あらすじを見ると非常に興味をかき立てられる。しかし正直言って期待はずれだった。素材は良いのに、色々使いすぎてダメにしている。そんなところだろうか。
 脚本は良くできている。ある一つの事件に孫が関わっていたことを知った祖母が内なる衝撃を抱えて、静かに物事を見つめていく様は鬼気迫るものがある。だが祖母のミジャの設定を色々と盛り込みすぎなのだ。「孫と暮らし自分の娘(すなわちジョンウクの母)はろくに仕送りもしてこない」という設定だけで十分なのに、そこにアルツハイマーやらヘルパーとして働く話やら詩の教室に通うやら。どれもこれも中途半端でなぜそれが必要だったのか理解しかねる。特にアルツハイマーは全く必要ない。観客は映画の中で必要な情報だけを求めている。
 だから時折挿入される登場人物の詩の朗読シーンはとても煩わしい。そんなものはせいぜい1つや2つで済むのに、何回もそういった場面がある。
 主人公の性格も好きにはなれない。自分は直接関係しないまま、事件の荒波に巻き込まれる「かわいそうな」役どころのはずなのに、全然そういう気持ちが起こらない。前半部分で婆さんなのに微妙にかわいこぶるから腹が立つ。はっきり言って駄目な人なのだ。周りの人間の方が共感を呼ぶ。事件をなかったことにしようとする親、事件を忘れようとする子供、自殺した女子中学生の母親。なのに主人公が鬱陶しい。(ただし後半部分は前半との落差もあり最高だ。)
 ここまで散々けなしたが、俳優陣は素晴らしい。主演のジョンヒも悲しみを抱えた初老の女性を演じきっていた。
 コンセプトが良い分、欠点が目立ってしまった。上映時間も実際よりも長く感じられた。エンディングはとても気に入ったのだが。
(12年3月18日 映画館 3点)
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