てっちゃん

マンディンゴのてっちゃんのレビュー・感想・評価

マンディンゴ(1975年製作の映画)
4.8
これ確か、いつかしらの町山智弘さんが映画紹介されていたので、ずっと観たいリストに入れていたんですね。

ようやく観ますか!となったので鑑賞したわけなのですが、これがですね、、、

これは凄まじい映画だなと、我が映画人生でベスト級がきてしまいましたね!(コックと泥棒、その妻と愛人ぶりじゃないかな)
ただただ、、凄まじい作品なんです。

喜び勇んで、「これ観て下さいよ~頼みますよ~」と言えるような代物ではありません。
ただ事実として、このような時代がありました(しかも少し前の話だということに驚愕する)という歴史認識として大きな意味を持つ作品だと思うんです。

表現はよくないが、本作は映画作品として、とんでもなく面白いです。
しかしながら本作は"なかったこと"にされていた作品だったんですね。
それはなぜか?、自分たちが過去にやってきた蛮行を見たくない、認めたくないからに他なりません。

そういえばここ最近では、歴史改竄がされている日本と同じですよね(政府がそれを言い始めた)。
過去に何が起こったのか、どういった経緯で誰がどんな意図をもってそれが決行されたのか。
その結果なにが起こったのか。
その失敗を起こさぬように今後どうしていけばいいのかについての検証。
これ必要ですよね。
でもそれを"なかった"ことにしようとしていますよね。

本作においても、過去の歴史を隠したいという経緯があったんですね。
しかしながら再び観られるようになりました。
正しい歴史を学ぶことができる大切さ、これはいつの時代も重要なことですよね。

本作を観て、何を思うのか感じるのか。
それは各自それぞれであることは前提として、”これは繰り返したらいけない”と思うことでしょう。
それを知っている、知らないとでは全く違いますよね。

さて本作は、アメリカ南部における黒人奴隷の過去を徹底的にリアルに描いています。
知らないことがたくさんありました。
観ていて、とても辛いことがたくさんありました。
なので、休み休み観ていました。

その中で少し挙げると、黒人が競走馬のような扱いをされていることを知りました。
競走馬ってどういうこと?
競走馬のように優秀な肉体を持つ黒人を掛け合わせて、優秀な黒人を産ませて、高値で売るのです。
コレクション感覚ですよね。
誰のために生まれてきたのか?分からなくなってしまいますよね。

黒人は病気になりました。
すると、獣医に診てもらいます。
獣医?耳を疑いましたが、黒人は人間ではないから、獣医なんです。
それが当たり前として行われていたんです。

白人男性の性欲の捌け口として、黒人女性が強制的に妊娠させられます。
しかもそれをありがたいこと、運命のことのように受け入れる黒人女性たち。
さらには生まれてきた子供を売ることだってします。
彼女らは、それが当たり前のように思っているのでしょうか。
そんなはずはありません。
意志を持っているに決まっています。しかし、どうしようもないのです。

黒人に知識をつけさせることを拒みます。
知識をつけると、なにか困るのでしょうか。
それを考えながら観て観て下さい。
なぜ知識を持たなければいけないのかが分かってくるはずです。

根本的な差別意識、土着的な差別意識。
それが蠢く本作のラスト。
その先にあるものとはなにか。

鑑賞後、しばらく呆然としておりました(本作では敢えて音楽を場違いなものにしているのだろうけど、その効果がとんでもない)。
こういったことを知らなかった自分、知ることができた自分。

だからこそ言えることは、”忘れてはいけない”ことであり、”後世に残すべき事実である”ということ。

周囲だけが幸せに不自由なく暮らせればいいじゃんって考え方が蔓延している昨今ですが、それでいいの?と考えてみるといい。
なにが聞く力だ。聞く力がないから(聞くつもりがそもそもない)時代が変わったんだろ。
みんなが平和に過ごすことが一番じゃないか。
そんなことを呆然としながら考えておりました。

いやあ凄まじい作品だったな。
てっちゃん

てっちゃん