ハレルヤ

サラエボの花のハレルヤのレビュー・感想・評価

サラエボの花(2006年製作の映画)
3.8
サラエボに住むシングルマザーのエスマと12歳の娘のサラ。ボスニア紛争の傷跡が残る街で、自分たちの過去と真実に向き合う親子の姿を描いたヒューマンドラマ。

劇中で映し出されているのは端から見ると普通の一般人の人々。その日常を描いているように見えて、次第にボスニア紛争がもたらした悲劇の影が浮かび上がります。

紛争の場面は一切無し。大きな演出も全くありませんが、この作品が描き出すメッセージは心に深く刻まれました。

娘の修学旅行費のために必死に金策をする母親と反抗期の娘。この2人の姿が中心なので紛争の悲劇がより色濃く感じ取れます。

母親が隠し続ける紛争で戦死したという父親の真相。これに関しての真相は予想通りでしたが、終盤での親子の感情むき出しのぶつかり合いは演技とは思えないほど真に迫ったもの。主演2人の演技力には最初から最後まで注目して見ていました。

戦争であろうと紛争であろうと、その争いで起きた悲しみと苦しみは、その時のみならず後生にも絶望を与えるものだと改めて実感。

この根深い問題に焦点を当てたヤスミラ・ジュバニッチ監督。当時若干32歳で、しかも女性の新人監督でこの完成度というのだから恐れ入る。

90分という無駄のない時間にテーマをまとめ上げる手腕も素晴らしかったですし、映画としての見応えもしっかりと感じられるものだと思います。
ハレルヤ

ハレルヤ