回送ペリカン

空の大怪獣 ラドンの回送ペリカンのレビュー・感想・評価

空の大怪獣 ラドン(1956年製作の映画)
4.1
面白い。すごい。
炭鉱町の景色、坑道の列車、水浸しの岩肌…どこまでがセットなのか分からない景色のハイクオリティさと、バンバン死んでいく人々の死体を生々しく映していく子供騙しに終わらない怪奇譚ぶり、破壊される市井の人々の暮らし、的確なツボ押し。デカいムシ超怖い。それもちゃんと回収されて満を持してのラドン登場は、思ったより遅かったけど話の転がし方に納得できる気持ちよさが大きい。作戦立案時「(攻撃により阿蘇山の)噴火が誘発されたら却ってめっけもんじゃないですか」という呑気な暴力装置と、都市部の被害阻止のために犠牲を強いられる地方の怒り。そして斃れるラドンの悲壮感。被曝怪獣に敗戦のフラストレーションをぶつけて沈めるのを眺めながら敬礼して気持ちよくなってて大丈夫なんでしょうか、令和の怪獣映画は(個人の感想です)。

メガヌロン登場シーン秀逸すぎ。あのくらいの大きさに宿る異物感と実在感、居間にヌッと現れる唐突さに心拍数上がり鳥肌も立ってしまった。ラドンも、陰に入るだけで死、みたいな敵わなさが絶望的で、この映画、怖いなあ。親しみある福岡の街が(と言っても当時の街並みは知らないが)破壊されるのは興奮した。すごい壊しっぷり。ひしゃげる看板、飛ぶ瓦、素晴らしい。吊ってる糸が見えすぎとか、蛾みたいにジタバタ飛ぶのに醒めるとかはあるけど、差し引いて有り余る面白さ。
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