なべ

ドライヴのなべのレビュー・感想・評価

ドライヴ(2011年製作の映画)
3.8

 最近、レフンがいい!というのをよく見かけるので、気になって観てみた。

 昔、ザ・ドライバーって映画があった。チャラい役が多かったライアン・オニールがどういうわけだか寡黙な逃し屋ドライバーを演じてた。決して名画と呼ばれるような作品ではないが、シンプルでウェルメイドな粋映画だった。
 ベイビー・ドライバーを観たときには、逃し屋映画が進化したのを知った。妙な深淵さに走ることなく、シンプルで瑞々しい疾走感に満ちていた。
 そして「ドライヴ」。正統な逃し屋映画としての佇まいを有し、ちゃんとシンプルを貫いてる。その上ノアールな雰囲気も醸してて、ちょっとフランス映画みたいなところも好感。
 正直ベイビー・ドライバーを観て、もう当分はおもしろい逃し屋映画は撮れないだろうと思っていたのだが、なるほど、中年、人妻と子供、情にほだされるなど、ベイビーが陽ならこちらは隂。ベイビーとは逆のアプローチがあったか。

 無口なゴズリングは一見何を考えてるのかわからない風の演技だが、思考はだだ漏れ。彼のやるとこなすことすべてが先読みできる。ただ、彼はクルマの運転だけでなく、殺しもなかなかいけるクチ。普段はおとなしいのに、いざとなれば相手が初対面でも顔面をぐちゃぐちゃに潰せるくらいの凶暴さは持ち合わせてる。それまでの甘じょっぱい描写との振れ幅が大き過ぎてドン引きするくらい。
 普通、逃し屋映画の主人公は運転テクニックのみで相手を出し抜くのだが、本作ではやられる前にぶっ殺すという、おおよそ逃し屋らしくない方法で人妻とその息子を守る。それやっちゃうなら、主人公はドライバーである必要ないのだが…。残念な気はしたが、まあおもしろかったから良しとする。

 じつは自分の中では最悪の映画ララランドをみて、ライアン・ゴズリングが苦手になったのだが、本作でそれがちょっとだけ緩和された。まだまだ認めるわけにはいかないが。
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