佐藤克巳

花は偽らずの佐藤克巳のレビュー・感想・評価

花は偽らず(1941年製作の映画)
4.0
傑作「暖流」の二匹目のドジョウを狙った安易さは窺われず、技有りの好編となった大庭秀雄監督の瑞々しい作風が心地良い。親戚関係の社長夫妻大山健二、岡村文子からの縁談に気が乗らない事務員徳大寺伸は、タイピスト水戸光子に気がある。富裕家縁談相手の高峰三枝子は、大阪から母葛城文子を連れて社長宅に滞在。ある日、水戸の案内で本郷に下宿する元書生幼馴染の科学者佐分利信を訪ねると、徳大寺と親友と分かり心の内を探らせたが判然としない上、徳大寺は映画の誘いも断った。そこで佐分利を誘うと、高峰は、彼の支度中に机の本を捲って自身の写真が挟んである事実を知る。徳大寺に遠慮して退職した水戸の故郷に彼は現れた。縁談を断られた高峰は、佐分利との縁談を希望したが一歩遅く、彼は喫茶店の女との結婚を仄めかした。高峰は、彼の例の写真を破り捨てた。私には佐分利が一番無残だった気がする。
佐藤克巳

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