オリヴェイラ監督92歳の作品。「家路」というよりは「家に帰る」という意味のタイトルだと思う。
ベテラン俳優が事故で妻と娘夫婦を亡くし、孫と暮らすことになる。
カメラは第三者の視点として淡々と老人の日常と悲劇を映す。「家に帰る」とういう当たり前の行為に意味がある。
年老いたピコリの哀愁がたまりません。また、オリヴェイラ監督の真骨頂でもある夜の部屋や街などの暗部の映像の美しさが際立っている。
マルコヴィッチやドヌーヴといった有名俳優を端役で使う贅沢。信頼関係があってなのだと思う。
私は勝手に1人のベテラン俳優が老いと向き合う作品なのかと思って観てましたが、もっと奥深いようです…
📌特典映像の監督のインタビューより
監督は科学の発達や物質文明を嘆き、未来を心配していました。人間が物質に依存した生活をしていること、人間らしさを失うこと、人間本来の良い性質が消えかけていること。そんな危い時代を1人の年老いた俳優の行動を通して見せているのだと思います。
監督の思いを知ってから再び観ると、何度も映るパリの街は、ただの美しい街並ではなく、車や人に溢れた物質文明のパリを描いていたんだと気づく。どんなに科学が発展しても人の悩みはなくならない。そんな大きなテーマが隠されています。