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家路
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『家路』に投稿された感想・評価

netfilms

netfilmsの感想・評価

4.0
 ジルベール・ヴァランス(ミシェル・ピコリ)は、舞台を中心に活躍しているベテラン俳優。ある日、ヴァランスは妻と娘夫婦が交通事故で亡くなったとの知らせを受ける。突然始まった孫セルジュと二人だけの静かな生活。愛する者を失った悲しみや寂しさはあるものの、かわいい孫との暮らしは、ヴァランスにささやかな幸せをもたらしてくれた。そんな折、敬愛する映画監督の作品に代役出演を依頼されるヴァランスだったが・・・。オリヴェイラの映画というのは、いつも飄々とし、観る者を戸惑わせる。イヨネスコの『瀕死の王』の舞台本番から始まるのだが、主人公であるミシェル・ピコリはカメラに延々と背を向けている。それどころかカメラは幕間に下がり、一見不要に思える裏方スタッフの様子を伝える。カーテン・コールの瞬間も、普通は観客席にカメラを置き、手をつないだ出演者たちのお辞儀のショットと拍手をする無数の観客たちのショットを切り返して撮るのが一番オーソドックスなのだが、どういうわけかオリヴェイラはそれを回避する。何が映っているのかと言えば、舞台袖に掃ける役者たちの姿と、カーテン・コールのため舞台に戻る役者たちの姿である。そこで急遽、裏方スタッフから家族の事故死が告げられ、明らかに動揺するミシェル・ピコリの表情をクローズ・アップで押さえるべき場面でも、カメラは主人公の姿をなぜかまったく追わない。

 他の役者陣が待ち構えるところにカメラを据え置き、そこに慌てた様子で着替えて病院に向かう主人公の姿が遠ざかる後ろ姿のみ描かれる。主人公の仕事に行く前の習慣として、BARに立ち寄るのだが、この場面が少しずつ形を変えながら、執拗に繰り返される。最初は主人公の座ったテーブルに、別の男が座る描写が明らかに編集の雑味を飛び越えて、作為的に描写される。それが何度も続き、やがて主人公の座るテーブルをもう1人の男も狙う場面がある種の喜劇のようなユーモアを持って提示される。それら少しずつ形を変えながら反復していく描写に対して、真っ直ぐ家に帰るはずが、誤ってBARに寄ってしまう主人公の悲哀を一層際立たせる。あるいは孫の登校を見つめる主人公の姿をおさめた場面の反復だったり、物語の中で何度も出て来る主人公の演技だったり、エージェントから出演を打診される場面でも何でも良い。それら全ての場面が1時間30分という映画の中で、幾重にも反復していく。大抵の場面転換の際に、渋滞の騒音を感じさせるショットが続くのも偶然ではないだろう。一見平和に見える文明社会に突然起きる非文明的な突然の暴力というオリヴェイラの要素が、夜の街で若者にオヤジ狩りされることで露になる。主人公がタクシーの中から見つめた観光名所の様子とも無関係ではない。人々が生きる社会のストレスに対して、文明を育んだ長い歴史の中で作られた建造物などとの物言わぬ対比は、100年というスパンで文明社会に生きて来たオリヴェイラならではの吟持だろう。
emily

emilyの感想・評価

4.2
年老いた名舞台俳優ヴァランスはある日、事故で妻と娘と娘婿の3人を亡くし、孫と暮らすことを余儀なくされる。淡々とした日常の中で、テレビの話が入ってきて断ったり、アメリカ映画出演のオファーがくる。代役ではあるが、それを受けることになったヴァランスは、なかなかセリフが覚えられず、なれない英語でのセリフであるため悪戦苦闘する。

冒頭はヴァランスが演じてる演劇が長い間映される。しかも彼の背中越しにセリフを長い間聞かされるのだ。そのあとも大事なところで表情を見せず、必要ないと思われる物を映しこみ、日常を描写する中で、生と死、静と動を繊細に捉え、何気ない日常の大切さ、その中で確実に年老いていく様を切なく静かに描く。

全体に暗いトーンの中で、彼の心の闇を映し出すように、カーテンを開いたそこ先に広がる光の中にはいつも孫がいる。窓の柵越しに孫をとらえ、そこに広がる子供の未来の無限を感じさせる。パリの街並みの2面性昼と夜をコントラストとして描く。日常に見逃しているような街の美しさ、毎日同じ繰り返しの日々の中で見逃してしまいそうな細かい美を重ねていく。ガラス越しに彼の日常を見せ、生活音の中に言葉がかき消される。その中に感情の起伏があれば、それが音として観客の耳に届くのだ。

新しく買った靴についての会話から入る、エージェントとの会話には足元だけが映る。足の動きにはこんなに表情があるのかと気づかされる。しっかり動きに感情が表れており、そのあと顔を映った際に、いかに人は顔を作り人と接しているのかが分かる。そう何気ない細かい描写の中に、気づかされることが沢山あるのだ。

カフェでのシーンにそれが色濃く出ている。いつも同じ新聞を手に、同じ席でエスプレッソを飲む。彼が去った後も、ガラス越しに同じ席を映す。そのあと別の男性が違う新聞を持ち席に座るのだ。このシーンは後半でも繰り返される。いつもと同じ時間の日々がほんの少しだけずれたら?少し遅くカフェに着いたら、別の男性は同じ席に座れず、違う席に座る。しかし外では路上で音楽を奏でる人がいて、いつも感じられない音楽を聴くことができる。いつもとほんの少し違うことをしたら、世界は別の色に見えるのだ。観客にはまるでサイレント映画のように、ただ路上の音楽だけが響いている。カフェでのやり取りは、非常にコミカルに描写され、作品の中でよいスパイスとして光っている。

観客が見たい部分を映さず、まるで不必要に思われる部分を映す。その後どうなったのかは描写されず、違うところで想像させ、また予想もしてないところで、あらゆる産物を観客の残してくれるのだ。

終盤は英語でのセリフに、記憶もついていかず苦戦する彼。それでも若くみせるためのメイクとカツラで変貌した彼は、自身も驚くほど若々しく、可能性に満ちてるように感じさせる。しかし年齢は平等であり、それに逆らうことはできない。俳優として走り続けた彼のラストはあまりにも切ない。一番見てほしくない人がそこにいる。未来だけを見据えてほしい人がそこにいる。帰る場所がある。帰れる場所がある。ただ家に帰るのではない。それは望みながらも拒否してきた家路なのだ。その時がきた。しかしこれでやっと楽になれるんだろう。
leyla

leylaの感想・評価

3.8
オリヴェイラ監督92歳の作品。「家路」というよりは「家に帰る」という意味のタイトルだと思う。

ベテラン俳優が事故で妻と娘夫婦を亡くし、孫と暮らすことになる。

カメラは第三者の視点として淡々と老人の日常と悲劇を映す。「家に帰る」とういう当たり前の行為に意味がある。

年老いたピコリの哀愁がたまりません。また、オリヴェイラ監督の真骨頂でもある夜の部屋や街などの暗部の映像の美しさが際立っている。

マルコヴィッチやドヌーヴといった有名俳優を端役で使う贅沢。信頼関係があってなのだと思う。

私は勝手に1人のベテラン俳優が老いと向き合う作品なのかと思って観てましたが、もっと奥深いようです…


📌特典映像の監督のインタビューより

監督は科学の発達や物質文明を嘆き、未来を心配していました。人間が物質に依存した生活をしていること、人間らしさを失うこと、人間本来の良い性質が消えかけていること。そんな危い時代を1人の年老いた俳優の行動を通して見せているのだと思います。

監督の思いを知ってから再び観ると、何度も映るパリの街は、ただの美しい街並ではなく、車や人に溢れた物質文明のパリを描いていたんだと気づく。どんなに科学が発展しても人の悩みはなくならない。そんな大きなテーマが隠されています。

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