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フルタイム・キラーのnetfilmsのレビュー・感想・評価

フルタイム・キラー(2001年製作の映画)
3.7
 既に殺し屋の世界で名前の売れた男になっているO(反町隆史)は、同業者であるトク(アンディ・ラウ)の存在にすぐ気付くが、彼がどうして自分に執着するのかわからないまま、黙々と殺しの仕事を遂行する。雇い主とのやりとりはタランティーノの影響が感じられ、ここでも再びジョニー・トー組の常連ラム・シューが背景に潜む組織という集合体を武器に、Oを買い叩きにかかる。アンディ・ラウ扮するトクは殺し屋でありながら、そもそもどこかの組織に依頼され、Oの命を狙っているわけではない。彼にはOを執拗に狙うだけの理由があり、殺し屋を生業とするのではなく、あくまでターゲットはOただ一人である。だからこそOの意中の女を手前勝手にリサーチし、彼女を持ち前の格好良さで誘惑する。トクは登場から数分、滑稽なお面を被って登場する。家政婦チンは昼間はレンタルビデオ屋で働いている。そのレンタルビデオ店に毎日別のお面を被りながら、ビデオを借りていく奇妙な男の正体がトクである。

 チン(ケリー・リン)の存在がOとトクの間に割って入る。この女性はミステリアスな雰囲気を持った男性に惹かれるらしく、明らかに危険な賭けにも関わらず、男についていくような女性である。寡黙なOに対し、狂気じみた笑顔を見せるアンディ・ラウの方に気持ちがなびいていくが、Oは再度強引に引っ張っていく。今作においてはまた刑事である捜査官リー(サイモン・ヤム)も重要な任務を負う。最初はこの2人の殺し屋を捕まえようと努力するが、やがてトクに別の任務を任されることになる。彼ら3人の力関係が三すくみならば話は早いのだが、どういうわけか今作においては、警察組織が脆弱さを露呈してしまう。前半部分の雇い主のヤクザとOのやりとりがタランティーノだとしたら、Oとトクのコンピューター上のやりとりは明らかにウォシャウスキー兄妹の『マトリックス』シリーズの模倣であろう。それに加えて、今作ではアラン・ドロンというセリフが見られたように、これまでの西部劇のような男同士の撃ち合いに対し、フランス製アクションへの影響も垣間見える。様式美に徹したアクションの構造はより俯瞰的に処理することにより、非現実的な視点を帯び始めていることにも注目せねばならない。
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