半兵衛

ヒーロー・ネバー・ダイの半兵衛のレビュー・感想・評価

ヒーロー・ネバー・ダイ(1998年製作の映画)
3.5
二つの敵対する組織がお互いのボスを殺すため雇った二人の殺し屋の友情と心意気といういかにもジョニー・トーらしい題材。そんな一見すると単なるB級アクションみたいな内容を、決まったスタイリッシュな照明とド派手なガンアクション、破壊される壁やガラスの破片が雪のように舞い散る映像により虚構ならではの美しさに溢れた映画に。

でもそれ以上にびっくりしたのはストイックな主人公ジャックとそのライバルで饒舌で人を食った態度ばかりとる殺し屋チャウという二人のキャラが日活時代の小林旭と宍戸錠に似ていることだったりする、序盤でのバーにおけるユーモアに満ちたやりとりなど日活アクションを思わせる展開をやっていたりともしかしたら監督は意識しているのかと感じた。そう思うと『ヒーロー・ネバー・ダイ』というタイトルもスクリーンのなかで活躍した小林旭や宍戸錠のみならず、数多の殺し屋やガンマンを演じてきた大スターに対するオマージュとして付けたのではと思えてくる。

序盤は無敵のヒーローだった二人が依頼人に裏切られ、容赦なく銃で撃たれて重傷を負うのが現代的。特に宍戸錠みたいな雰囲気のあったチャウが両足を切断することになり、生気のない状態で付き合っている女にすべて世話される姿は衝撃を受けた(ただ似たように重傷を負ったジャックが特に後遺症もなく普通に回復しているのは納得いかなかったけど)。だからこそ、そんな挫折を乗り越えて自分を裏切った悪を倒すため再び銃を握る展開が熱く胸に込み上げてくる。ラストの勇ましい主人公二人はまさしく『ヒーロー・ネバー・ダイ』というタイトルに相応しい。

チャウが足がない状態で銃を撃つ工夫をしたり訓練をするさまは元ネタとおぼしき『続・荒野の用心棒』より、中村敦夫出演のテレビ時代劇『おしどり右京捕物車』(下半身が麻痺して動けなくなった同心が箱車を妻に押してもらいながら動く上半身のみで悪を倒していく)のほうが近いかも。

文字通り命を賭けて自分の生きざまを貫いた主人公たちによるラストはカッコいいけれど、あまりにも決まりすぎていてちょっと照れ臭くなった。

チャウが髪の長いギャングに掛ける言葉がまんま『蘇える金狼』の松田優作で笑える。
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