茶一郎

ヒーロー・ネバー・ダイの茶一郎のレビュー・感想・評価

ヒーロー・ネバー・ダイ(1998年製作の映画)
4.3
 出ました!ジョニー・トー兄貴の男の友情とその美学!
 抗争を続ける香港マフィアの2つの組が、それぞれ凄腕の殺し屋を雇った。ジャックとチャウ。二人は敵でありながらお互いの実力を認め、「好敵手」と書いて「友」と読む男の友情を結んでいく。
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 今作は、特にこの友情の描写が序盤から尖りに尖っている。仕事をバシっと決めたジャックは、やおら大きな木に近づくと殺し屋仲間と並んで立ちションをして、同じボスに雇われた殺し屋同士の友情を再確認。この「一緒に連れションした奴は絶対友達」的男の友情演出、これだけでも相当尖っているが今作はその先を行く。
 ジャックを追うチャウは、ジャックがその仕事をした場所に辿り着き、これまた仕事をバシっと決めると、何とあのジャックが立ちションをした大きな木に近付くと、チャウもその場所で立ちションをするのだ。まるで「好敵手」の立ちションをした場所の記憶に誘われるように、同じ場所で時間を超えた「連れション」をする。これはもう「時をかける立ちション」といえる男の友情演出。 
 他にも、ワインバーでお互いのグラスを割り合う謎遊びを始めるジャックとチャウ、その加速する「ワイングラス割り合い」を彼女に止められるという、のちのジョニー・トー作品に続くような「はしゃぎすぎた男子を止める女子描写」も今作に健在。いくらプロの殺し屋になっても、男は一生、小学生男子のままなのです。
 しかし、このワインバーの一件が、男泣きを誘う最高のエンディングに繋がる。

 そんな友情を育むジャックとチャウ。しかし、所詮は雇われの身、裏切り裏切られの闇社会の抗争に巻き込まれていった。
 タイトル『ヒーロー・ネバー・ダイ』、そして今作の主題歌とも言える『♪スキヤキ a.k.a♪上を向いて歩こう』。どんなに苦境に立たされても真の男は屈しない。天に輝く太陽を見つめ、永遠の男の友情を誓う。そして真の友情は、死してなお、その男の右手に銃を持たせる。今作の「男の友情」も、まさに時をかけるカッコよさ。
茶一郎

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