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ジョンとメリーの一人旅のレビュー・感想・評価

ジョンとメリー(1969年製作の映画)
4.0
ピーター・イエーツ監督作。

バーで知り合い一夜を共にしたジョンとメリーの恋模様を描いた恋愛ドラマ。
ジョンとメリー、男と女の恋の駆け引きが描かれる。二人のスタート地点はベッドの上。普通だったら男女の恋愛は段階的に進んでいくはずだ。出会いに始まり、デートを重ね、少しずつ愛を育んでいく。だが、ジョンとメリーの関係はアブノーマル。酔った勢いで出会って即セックス。恋愛におけるゴールが二人のスタート地点なのだ。肉体的には既にひとつになっていても、心はバラバラ。相手の名前すら知らない状態。そうした中、ジョンとメリーはお互いを知るために何気ない会話から始める。そして同時に、両者の心の声(本音)も聞こえてくる。表向きは相手を気遣ったり優しい言葉をかけていても、心の中では自分の本音と相手の本心の激しい読み合いが繰り広げられる。ジョンとメリー、それぞれの水面下に潜む理性と打算的な思考が露わになっていくのだ。
相手に対する愛の量と、心の声の量は反比例する。心の声がやかましい内は、理性が愛を上回っているように思えるのだ。だが、無機質な部屋で会話を続ける中で次第に心の声は聞こえなくなってくる。つまり、愛が理性を上回るのだ。
男女の心の機微を、あえて鑑賞者に“聞こえる”かたちにした演出が、男女の愛と理性の関係を浮き彫りにする。ジョンの心の声とメリーの心の声がまるで実際に会話しているかのように聞こえてくるのが不思議。一方で、表面上では言葉による実際の会話がなされる。表面上の会話と水面下の会話。どちらも同じ二人の人間によるものなのに、会話の性質がまるで異なるのが興味深く、面白いのだ。
そして、ダスティン・ホフマンとミア・ファローが愛と理性の間で揺れ動く繊細な演技を見せている。特にミア・ファローファンにとってはたまらない作品で、彼女の魅力がたっぷりだ。ショートカットがとても良く似合っているし、色白過ぎて血管が浮き出たお顔も病的な可愛らしさ。ジョンの家からなかなか立ち去ることができず、つい昼寝してしまう姿なんかも最高に可愛くてセクシーなのだ。
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