tak

イタリア式離婚狂想曲のtakのレビュー・感想・評価

イタリア式離婚狂想曲(1961年製作の映画)
3.8
映画好きの親父殿が
「ピエトロ・ジェルミって人の映画ええぞ」
としきりに言っていた。自宅に「鉄道員」や「刑事」の主題曲レコードもあったくらいだから、かなりお気に入りだったんだろう。
あもーれ、あもーれ、あもーれぇ
あもれみぃぃおぉぉ♪
…と「刑事」の主題歌を口ずさむのだ。父に勧められて初めて観たのが「鉄道員」だったから、ジェルミってなんか深刻な話を撮る人なんだろなと思っていた。

ところがである。映画の知識がだんだんついてくる中で、僕はジェルミ氏はいわゆる艶笑コメディを撮っていると知る。そしてたどり着いたのがこの「イタリア式離婚協奏曲」。

没落貴族の主人公は、従妹と密かに愛し合うようになった。長年連れ添った妻が邪魔で仕方ない。当時のイタリアには姦通の罪が定められていて、姦通した妻を殺した夫は短期の懲役刑しか科されなかった。主人公は、妻が浮気できるように仕向けるが、そこに司教の息子である画家が現れる。天井画の手直しを彼に依頼して、妻と二人きりにすることにした…。

なんだこりゃ。
まさにあもーれ、あもーれ♡じゃねぇか。

若い頃。映画に出てくるイタリア男って、好色で陽気で何を考えてるかわからない輩が多いと、僕は勝手に思っていた。女にしつこく執着する男は決まってイタリアだ。未練が服着て歩いてるような「終着駅」のモンゴメリー・クリフト、アメリカ女につきまとう「旅情」のロッサノ・ブラッツィ、われらがダイアンをナンパする「リトル・ロマンス」のテロニウス・ベルナール少年。もちろん偏見だと百も承知。だけど、マルチェロ・マストロヤンニが演ずるこの映画の主人公フェフェはまさにその輩の一人だった。

やがて駆け落ちした妻と画家。世間から寝取られ男と噂されるが、実は楽しくてしかたない。ついに彼は二人を追いつめようとする。唖然とする結末と、クスクス笑える皮肉なラストシーンが控えている。艶笑コメディはお子ちゃまにはわからない大人の笑い。

「40過ぎたらおねーちゃんなんてどうでもよくなるんですよ」
と先輩がおっしゃっていて、僕もそうなるのかなと思っていた(ちっともそうならなかったけれどw)。だけどその年齢を超えた今思うと、この映画で
「人生は40からさ!」
と言うマルチェロの言葉もどこか素敵な響きに聞こえる。もちろん、法律を逆手にとった殺人はダメ、ゼッタイ。劇中、マストロヤンニ主演の「甘い生活」が引用されるのも映画ファンには楽しい仕掛け。
tak

tak