TaiRa

北の橋のTaiRaのレビュー・感想・評価

北の橋(1981年製作の映画)
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パスカル・オジエは長生きしてたらどんな女優になってたかね。最初で最後の母娘共演。

街アートに向かって戦いを挑んでる狂人ガールと訳あり女性が何故か一緒になって、パリの街を双六にした陰謀?に巻き込まれていく。発想の原点はセルバンテスの『ドン・キホーテ』だけど、そこに『Ingress』的なARゲーム要素が入ってんのがやっぱ凄い。ビュルとパスカルのオジエ親子が脚本も書いて(即興で足した部分かな?)主演もしてるけど、これ役者の演技論でもあるから面白い。風車を巨人に見立てることも、見えない敵と戦うことも、街を読み替えることも、芝居の範疇に収められる行為な訳で。芝居の持つ狂気性みたいなものを描いてるとも言える。そんなことをわざわざ描く映画もあんまないけど。他者に利用され、そそのかされて過ちを犯した主人公が設定されていて、役者の自主性を持つ重要性を説いてるようにも見えたり。その上で男たちの陰謀と対峙する。このチープな犯罪劇がどんどん奇妙さを増していくのも楽しい。蜘蛛の巣攻撃とか全然ダメージ受けてなさそうだが、あれは彼女の想像力が溢れ過ぎて効いてんのかな。ともかく画が詩的。ビュルが発見するとこの切り返しも音使わないのがかっこいい。パスカルがドラゴンと対決するとこは、狂人の世界を共有するという芸術ならではの尊さが感じられる。再開発されていくパリへの鎮魂歌であり、作り直しよりも読み替えを支持している点においては、ヒップホップやストリートカルチャー的な精神も感じたり。
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