KOUSAKA

北の橋のKOUSAKAのレビュー・感想・評価

北の橋(1981年製作の映画)
4.0
シネマメンバーズにて、ジャック・リヴェット監督の6作品を順番に鑑賞。

1回目は「相変わらず意味不明やけど、リヴェットらしくて面白い」くらいの感想やったけど、ドン・キホーテがモチーフになっていると分かってもう一度見てみたら、パスカル・オジェ演じるバチストに対する愛着が湧きまくって、オープニング~バチストが「さあ来い、バビロン」という開始数分のあたりの段階で、すでに全然見え方が変わりました。

バイク(カブ)、革ジャン、ヘルメット、方位磁石、そして(後で登場する)ナイフで武装するドン・キホーテ🥹可愛すぎる!

バチストがやたらとライオン像に執着していたのは、パリがバビロンに見えていたということでしょうか?マックスの大型バイクに興味津々だったのも、ドン・キホーテという補助線を引く事で理解できました。

そうそう、マックス役のジャン=フランソワ・ステヴナンが登場した時はテンション上がりました。2021年に企画上映で彼の出演作『防寒帽』『男子ダブルス』『ミシュカ』などを立て続けに見て、ざらざらとした粗野な魅力に打ちのめされていたので。

人や車が普通に往来する中でのパリの街ロケは、いつもスリリングで好き。この当時ロメールやリヴェットが、かわるがわるロケをしていたんだと思うと、パリってやっぱりカッコ良すぎるー!😭

この作品は、やっぱりバチスト役パスカル・オジェの魅力に尽きるのではないでしょうか。途中からヘッドフォン女子になって可愛すぎるし、しかもそのヘッドフォン(盗品😆)がレトロでゴツくてかっこいい!蜘蛛の巣みたいなのを張り巡らせるヘンテコな武器(あれ何なん?)にはヤラれてたけど。

実母のビュル・オジェ演じるマリーとの会話シーンはどれも印象的で、特に、ある死体を発見した時の「白馬や黒馬というのはいない、馬の色はいろんな毛が混じって決まるの、自然界には善も悪もないのよ」「死体は自然の過去形、現代はもっと悲惨な時代よ」「私に言わせれば生が善で、死が悪だわ」「いいかげん、目を覚ましなさいよ」というやり取りにはシビれた。

双六を参照しながらあちらこちらに出向いていくというメインの設定が面白いし、行った先に何があるんやろう?ってワクワクする。

行き先のパリ郊外の風景が、ことごとく工事現場やったり、マンションなどの建物の解体工事中の現場だったりするところが印象的で、80年代当時、どんどん変貌を遂げていくパリの街並みに対するリヴェットの忸怩たる思いが刻み付けられているように感じました。

敵対関係のように見えていたマックスとバチストが「師弟関係」を結ぶかのような(ドン・キホーテ的なファンタジーから現実社会に引き戻してくれる)ラストシーンにはグッと来たし、最後の最後にもう一度「あれ」を刻み付けて幕を閉じるという切れ味も含めて、これぞリヴェット節としかいえない魔法でした。
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