映画漬廃人伊波興一

北の橋の映画漬廃人伊波興一のレビュー・感想・評価

北の橋(1981年製作の映画)
4.1
まだまだ驚き足りぬこの知覚体験
ジャック・リヴェット
『北の橋』
実生活では母娘関係にあるビル・オジエとパスカル・オジエ演じる女性ふたりの人生の織り目など世間の知った事でない。
にもかかわらず二人がパリの街を縦横無尽に駆け巡るこの冒険譚は、観ている私たちを遠心分離機に放り込むように重力と浮力を分断させます。
数日間の出来事なのにまず時間感覚が奪われる。
次に理解不能なバチストの行動を丸め込みたくなる意思が引き剥がされる。
やがてジュリアンや複数のマックスの出現に記憶の飛沫が飛び散る。
そんな映画も大抵はいつしか何かが濃縮されていく筈なのに2度目の今回もまた決して煮詰まらず出口を見失ったままでした。
ですが重力と浮力を行き来する私の右往左往ごときで、『北の橋』の磁力が萎えるわけがない。
この知覚体験、まだまだ驚き足りなかった、と唸るのみでした。