ユカートマン

灰とダイヤモンドのユカートマンのレビュー・感想・評価

灰とダイヤモンド(1957年製作の映画)
5.0
ドイツが降伏した1945年5月8日。ロンドン亡命政府に繋がるゲリラのマチェクがモスクワ帰りの労働党(社会主義政党)の幹部を暗殺に試みるも、間違った人を殺してしまう。本当のターゲットを殺すために奔走する一日の様子を描いた話。

ナチスドイツに占領され、解放されたかと思いきや今度はソ連の衛星国となったポーランド。二つの大国に蹂躙され、ベルリンの壁が崩壊して東欧革命が起きるまで独立国となれなかった、そんな悲しいこの国の宿命を当時の人が描いたというだけでこの作品は価値があるけど、カメラワークやマチェクの服装、映画自体もとてもスタイリッシュで時代を感じさせない名作。冷戦当時、社会主義の国で労働党幹部を殺す映画を公開するなんて狂気の沙汰だったけど、マチェクを暗殺者、主人公をシチューカとすることで検閲は通ったらしい。もちろんワイダの意図はマチェクを悲劇の主人公とすることで体制批判をすることでした。この両義性を含んだ作品で検閲をくぐり抜けるなんて、やはり天才は違う。大好きです、ワイダ監督。
ユカートマン

ユカートマン