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麦の穂をゆらす風のcamusonのレビュー・感想・評価

麦の穂をゆらす風(2006年製作の映画)
3.7
舞台は1920年くらいのアイルランド。
アイルランド独立戦争と休戦条約締結後のアイルランド内紛を扱っています。

青々とした草に覆われているものの、どこか寒々しい感じがするアイルランドの片田舎。
草木の緑だけが鮮やかな原色で、人の生活にかかわるものは、落ち着いた褐色。
そんな片田舎にも英国軍による支配の手が伸び、反抗的な者が次々と殺されていく中、
暴力には暴力で対抗するほかないと、独立闘争に身を投じていく男達が描かれます。

密告により、主人公一味は英国軍に一網打尽にされてしまいますが、
主人公の兄に対して行われた、ペンチで手の爪を剥ぎ取る拷問には、
思わず身がよじれました。
人体破壊としては、最も軽い部類にもかかわらず、
痛さ100倍ってのが、つくづく不思議な器官です。

いろいろとあった後、殺し合いが過熱したところで、休戦条約が結ばれますが、
軍隊による暴力的支配から、非暴力的支配への移行という妥協案に対して、
条約を受け入れて、段階的に独立に向かおうとする条約賛成派=国防軍と
死んでいった戦友の意志を背負い、一気に独立を勝ち取ろうとする条約反対派
との対立が生じます。

民衆がひとたび武力を手に入れてしまい、
なまじ独立戦争を戦って、殺さなければ殺される状況が日常化していたため、
個々人の意志が凛々しいまでに強く、しっかりしているほど、
コントロールを失ってグダグダになるという。
結果、独立戦争を戦ったもの同士による殺し合いに発展します。

世界中で起きた、または、起きている内紛も、
似たようなケースは多いんだろうなあと感じました。
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