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狂い咲きサンダーロードのpeplumのレビュー・感想・評価

狂い咲きサンダーロード(1980年製作の映画)
4.6
滅茶苦茶にハチャメチャで毛ほどの優しさもぬるさもまぁいいかもぶち殺してぶっちぎる不世出の爆走映画。時代か、狂気か、その両方か。こんな映画が撮れるのか?撮れる、撮れるのだ。
名にしおう石井聰亙作品は岳龍になってからの『蜜のあはれ』を見ていたが、これぞ正真正銘その名を轟かした傑作。俺が今22だが、同い年でこれを作ったとか本当に頭おかしい。最高。とにかくパワーワードしかない。初鑑賞にして声だし可能上映にかち合うという運命に感謝するぜ。
とにかくジンさん。あらゆる青年がケリをつけて折り合いをつけて生き延びる、社会や組織の方針と己の理念のコンフリクトに敢然と声を張り上げて闇夜にバイクを駆っていくその勇姿を見よ。「百姓ッ!田んぼの真ん中で耕運機でも乗ってろやッ!!」
ジンさんの一貫した破天荒は『七人の侍』の菊千代に感じた天真爛漫さ放逸さを思わせるほど。和を以て貴しと為すこの国の風土では中々出現しにくいその強烈な個性に完全にアテられた。ともすると学生映画が陥りがちなそれらしきものの劣化版に堕すことなく、お上品に小さくまとまることを徹底的に回避し続け、エネルギーの原液だけをひたすら煮詰めてギリギリのバランスで回転してるその膂力が本当にすごい。
よく出来た学生映画なんかなーとか舐めてたら本当に半端ない完成度だったことに打ちのめされたのだが、それは役者やストーリーよりも撮影や照明や音楽、美術、録音の高水準によって担われているように思われる。あの笠松則通が撮影してたり、ただのうるせぇジジイだと思っていた泉谷しげるの音楽のハマり方がやばい。『君の名は。』のRADと同じレベルで歌詞付きの音楽が邪魔にならず共存してやがる。時代の狂った空気ということなら園子温の『BAD FILM』にも似てたけどこっちの方が見やすいし面白かった。とにかくつまらない瞬間がなかった。小林稔侍がネタキャラ扱いで面白かった。
ジンさん、ほんまかっけぇ。コタロウさんも渋いよ…。
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