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東京暮色のTheCharacterのレビュー・感想・評価

東京暮色(1957年製作の映画)
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これは狂気か、職人気質か。
初めての小津。なるほど、この人は化物。日を分けて家で映画を観ることはまま有るが、この作品に於いてはそうせざるを得ない面も。シーン毎の構図に一々唸らされる。2時間以上あるし、体力勝負。

小津はテクノ。しかもIDM寄り。目の奥へ、更に意識の中へ入り込んでいくような感覚。映像でこんな体験ができるとは。そのことで消耗もするのだが。マルコヴィッチならぬ、小津の穴。カウリスマキの心の師。こなれ感、さり気なさを鋭角に研ぎ澄ましている弟子に対し、師匠はといえば、言葉にせずとも余りに雄弁に語っている。そんな守破離の模様を楽しんでみたり。小津のこだわり振りは恐ろしい程。画面から造形が迸っている。モノクロの色調で、冷徹なまでの統制は更に際立つ。情報量は少ないが、会話が案外多い。交わされる内容に拘らず、画は常に張り詰めている。カットの鋭さ、フェードの無さがまた冷たい。その環境下で明確に活きてくるもの、それがユーモアだ。圧を抜いておかなきゃ潰れてしまう。壊れちゃうから。でも、まあ、完全には無理。内容が内容だもん。何なら、痛みをより意識させる機能さえ。対比を有効活用する、そんな表現は強い。笠智衆の棒な感じが良い意味で堪らんのだけど、だからこそ辿り着けるものが終盤確かに存在している。娘たちと好対照なとこがまた効く。ツインピークスのクーパーを思い出したり。カイルは棒じゃないけど。ただ、どちらも中間点や狭間、触媒的な人物であることは共通しているか。

明ちゃんが可愛くて、可哀想で、ケン坊がサイテーで、お母さんも...

撮り方がエグいせいで、今は若干ストーリーが分離してしまっている感が有るが、冷静に考えるとどっちも尋常じゃない。

小津って生き辛そうで個人作業向きな人のような気がするのだが、沢山映画を撮っているところも凄い。作品と日常、うまく分けられてる?大丈夫?と、お節介を焼きたくなる。どんな人だったんだろう。そこも気になる。
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