まりも

東京暮色のまりものレビュー・感想・評価

東京暮色(1957年製作の映画)
4.0
改めて安二郎のおもしろさに開眼したばかりで、観るたび新しい発見にときめいている毎日ですが、これはまたびっくり。安二郎、こういう感じもありなのか👀

ずっと暗く不穏です。なにしろみんな笑わないし、何かしら思い悩んでいる。お気楽に笑ってるのは、いつものいい具合に空気を読まない杉村春子だけ😊
ここのところ観ていた安二郎作品では、人物たちはみな率直で、掛け合いがからりと気持ちよかったのですが、ここでは誰も心の内を明かさない。だからこそ、表情や間の端々に吐露があります。

そして、新型肺炎で全世界がひっくり返っている今、原節子の急なマスク姿にぎょぎょぎょっ🐟
理由は一切説明なし。そういや変なあやしい刑事もマスクしていた。普通は原節子にマスクさせて顔を隠したりしないから、何らかの意図があるのでしょう。安二郎にはまだまだわからない謎があります。
マスクをすると表情が読みづらく、ずっと見ていると不安になってきます。改めて、人の印象はほぼ見た目と表情の雰囲気であることがわかりました。言葉の内容はどうでもよくなり、マスクの存在が気になって仕方ない。マスク使用時は、よほど目の表情と声のトーンに気をつけなければと思いました。
しかし、引っ掛かりとか小さな違和感は映画にとってスパイスとなり深みが出るのかもしれません。自粛生活とマスクがリンクして不思議な感覚あり。今観てヨカッタ。

人物たちが不幸せと思えることにも折り合いをつけていく様には、人間の持つ強さを感じました。世の中ってけしてみんなにハッピーには出来ていないし、不公平だし、悲しい側面を見たらきりがない。それでも生きている以上生きていく決意と意志が美しかったです。
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