オーウェン

ツリー・オブ・ライフのオーウェンのレビュー・感想・評価

ツリー・オブ・ライフ(2011年製作の映画)
5.0
この映画「ツリー・オブ・ライフ」は、厚みのある人間ドラマと、そこからイメージを羽ばたかせる美しい映像、クラシックの流麗な音楽。
これらが、混然一体となった秀作だと思います。

孤高の天才・テレンス・マリック監督の「ツリー・オブ・ライフ」は、家族を亡くした喪失感や父と子の確執など、誰もが経験する家族の物語を、太古から繰り返される、命の物語として、壮大に描き出していると思います。

この映画の主要な舞台は、1950年代のアメリカのテキサス州の小さな町だ。
ブラット・ピットとジェシカ・チャスティン演じる夫婦は、3人の子をもうけて、幸福な日々を送っている。

庭の木漏れ日、母のスカートの揺らぎ、ギターを爪弾く音-------。
日常にありながら、移ろいやすい奇跡のような輝きが、丹念に描かれていく。

やがて、野心を抱いた父は、家庭でも強権的に振る舞い始め、穏やかな母や子供たちとの幸せな日々が軋みだす。
長男は純真さを失って、父を強く憎むようになる。

そんなドラマに、生命や自然の躍動を伝える壮大なイメージ映像が重ねられる。
CGも駆使し、星の誕生や太古の海、恐竜のいた時代など、今の自分へ繋がる、途方もない命の連鎖が、生き生きと浮かび上がってくる。

そしてドラマは、喪失感を抱えたまま成人となった、ショーン・ペン演じる現代の長男が、家族との和解に至るまでを描いていく。

全編を通して、人生の意味を神に問うような語りが、実に印象的だ。

大学で哲学を教えていたというテレンス・マリック監督は、農場の風景が美しい「天国の日々」や、哲学的な戦争映画「シン・レット・ライン」などで、愚かな人間をそのまま包み込む自然を描くことを、モチーフとしてきた映画作家だ。

そして、わずか5本目のこの監督作で、カンヌ国際映画祭の最高賞を受賞したのだ。
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