1972年に何かの伴映で観た。高校二年生だった。おそらく何が映っているのか全く分かっていなかったと思う。
46年ぶりの再見。
白黒映画というよりも、灰黒映画とでもいうべきか。
トンネルを抜けるとそこは異界だった。小説世界をどのように表現したのかというと白の明るさを排した世界。画面で白が際立つのは炎だけ。何というのか深淵な映像表現で、暫くは画面の暗さにぼんやりとしていなくてはならない。意味不明の断章小説を脚色し、撮影効果で見事にまとめた力量はただならぬものがある。
撮影所で撮られた映画作品には総合芸術としての美しさがある。本作を観て改めてそう思う。
終わってしまったことを嘆いてもしようがないが、自責の念に駆られる。
旅館で出されている燗酒が実に旨そうで、帰宅後お気に入りの盃で一献傾けたのは言うまでもない。
1957年製作公開。原作川端康成。脚色八住利雄 。監督豊田四郎。撮影安本淳。
新文芸坐 白黒(モノクロ)映画の美学(2018)にては