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血だらけの惨劇のhorahukiのレビュー・感想・評価

血だらけの惨劇(1964年製作の映画)
3.9
ジョーンクロフォードvsベティデイヴィス再び!

9月は爺婆⑪

浮気夫と相手の女を、幼い娘の前で斧を何度も振り下ろし惨殺したママが20年ぶりに精神病院から帰ってくる。おじおば夫妻に育てられた娘のキャロルは、20年間会っていなかったために本当に治っているのか不安…。帰ってきたママは白髪のお婆ちゃんになり、頬もこけていたけれど、娘との再会に涙を流して喜ぶ。「もう大丈夫かな?」と安心したキャロルはママを連れ出し遊びに行ったり、自分の婚約者に会わせたりするが、次第に異変を感じ始め…。

イカレた婆ジャンルで良く紹介されているサイコスリラー。最近デイヴィスお婆ちゃんばっかり追ってきたので、次は『何がジェーン…』の相手役ジョーンクロフォード。『何がジェーン…』のヒット以降、二人ともホラーの出演が増えたけれど、クロフォードお婆ちゃんも流石の名演!闇を抱えつつ思い悩む姿の説得力がエゲツナイ!ちなみに監督はギミック&ホラーのレジェンド・ウィリアムキャッスル。脚本は『サイコ』の原作者ロバートブロック。この二人が組んで面白くないわけがないという安心感!

ママは返ってきた初日に惨殺した二人の悪夢を見て、自分を責めさいなむような歌を幻聴し、無意識のうちに手に持ってしまっているナイフに驚く。娘のキャロルは心配しつつも、ママの失われた20年を取り戻してあげようと若々しいカツラを買ってあげたり、当時身に着けていたような服装や、アクセサリーなどを与える。親子としての時間を過ごせなかった母子の関係を築き上げていくような仲睦まじい姿を見せられるのは微笑ましいのだけど、ママの闇の部分が隠しきれずにどんどんと表に出てくるのが悲しいし、それを必死に抑え込んで否定しようとする母子の姿もつらい…。そしてついに殺人が起こり始める…。

脚本がブロックなので『サイコ』を感じさせながらも、キャッスルの代表作のひとつ『地獄へつゞく部屋』の要素を引継ぎ、両者をミックスさせたような雰囲気。そして同年製作でライバル?のベティデイヴィスが主演したアルドリッチ『ふるえて眠れ』とも共通項を見いだせるのが面白く、ここに来て作品は違えど、同種テーマという点で再びジョーンクロフォードvsベティデイヴィスの図式が薄っすらと見えてくるところに因縁めいたものを感じる。だから『ふるえて眠れ』と同じスコアで!でも本当に負けず劣らずな面白さだった。むしろこっちのが好きかも。

外見を過去に戻すことで内面も引きずられるというポジティブとネガティブの両輪での並走がママに対する相反する期待を等しく沸き上がらせ、行われる影による殺人がクライマックスまで真相を煙に巻く。不可逆な時間が2人を嘲笑うかのような巨大な風車越しの俯瞰ショット、現在・過去・「過去からの未来(希望)」を重ねた編集が「過去からの未来」と現在を「負」で結びつける冒頭のうまさ。気遣いが存在価値を貶める『山羊座のもとに』的やり取り、そして濃く影を宿した二面性と影による犯行の美しさ。これすんごく好き。

更には同じく同年のディヴィス主演『誰が私を殺したか?』とも共通項が見受けられるっていうのが笑えてくる!張り合いすぎやろこの2人🤣でもこの『誰が私を殺したか?』要素はかなり核心に迫っていて、表面的なサプライズと嫌悪感だけでなく、あれはある意味で20年前に行われたことの反復でもあり、変な符合が面白い。このあたりは両方見たって人の意見を聞きたいところ!
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