ぴんゆか

おとうとのぴんゆかのネタバレレビュー・内容・結末

おとうと(1960年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

本当に当時の世界に入り込んでしまったかと錯覚するくらい、俳優陣全員役が板についているだけでなく、不自然なくらい自然だった。
中盤までは何もかも壊していき、手を差し伸べようとしている人までも強引に振り払っていくような「おとうと」の態度に疲れ、また裏切られても裏切られても信じつづける人達の姿がリアルで見ていられず、視聴をやめようかと思うほどだった。
ただ、吟子の夫が言ったという、「おとうと」はみんなの成功の犠牲になっていたのではないか(意訳)という言葉にはハッとさせられた。ある程度の生活水準を保ち、それなりに人並みの幸せを追える人間にはハナからその土台に立つことができない人間のことは想像もつかず、努力が足りなかったからだと簡単に切り捨ててしまうことが多いかもしれない。人々が吟子の夫や吟子のようにより深い地点から物事を見られるようになったとき、そしてほんの少しだけ赤の他人の感情に寄り添える余裕が生まれたとき、この国から真の意味での貧困がなくなるのではないかと思う。
ぴんゆか

ぴんゆか