Mikiyoshi1986

美しき冒険旅行のMikiyoshi1986のレビュー・感想・評価

美しき冒険旅行(1971年製作の映画)
4.2
まず導入部でディジュリドゥの言霊ならぬ音霊が、自らの意識と共鳴し合うかのように響き渡ります。
対して騒がしいラジオチューニングの雑音が静なる精神世界を打ち崩すかのように、混沌とした社会の現状を喚起するオープニング。
目まぐるしい文明社会で精神を蝕まれた父親の暴挙により、オーストラリアの荒野に放り出されてしまった姉弟。
こうして、美しき冒険旅行は幕を開けます。

雄大な自然の中で育まれる生と死のサイクル。
砂が体にざらつきまとわりつく感じは不快指数マックスです!
「クレージーホース」とか「砂の女」にちょっと近い。

一方、アボリジニの通過儀礼Walkaboutを独り行う少年と出会い、姉も共にこの通過儀礼を経験することに。
砂漠の中に現れた泉で、水中を舞うように泳ぐ少女の裸体は処女性と無垢の崇高さを圧倒的に象徴し、その美しさを見事フィルムに収めています。

文明とは?豊かさとは?生き物とは?人間とは?
そんな内なる精神世界を見つめる神秘的な旅。

本編の一連の描写はアボリジニの人から見たら一体どう映るのかが物凄く気になりました。
求愛ダンスのくだりは切なすぎて、もう…!ってなります。

生命を受け継ぐ狩りとスポーツハンティングの対比やら、物質と精神の両立なんか色々と考えちゃいますね。
あの時はまるで幻だったかのように、現代の生活に順応してしまう姿は一層儚い。

そして冒頭の一節が鮮烈に活きてくるラスト。
デビュー作ながらも孤高の作品です。
Mikiyoshi1986

Mikiyoshi1986