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美しき冒険旅行のhasseのレビュー・感想・評価

美しき冒険旅行(1971年製作の映画)
4.0
オーストラリアのむせ返るような熱気を帯びた荒地ロケの名作といえば、コッチェフ監督『荒野の千鳥足』があるが、こちらもなかなかのもの。荒野、砂漠、荒削りの断崖、奇々怪々な爬虫類や昆虫のドアップ、それらの中を、取り残された二人の姉弟が直感だけで人里目指して放浪を始める。

父親が姉弟に発砲し荒地へと追いやり自殺するシーンは、物語のきっかけづくりのためとはいえあまりに唐突で、やけっぱちな演出。ここは好みが分かれるところか。

人里へと旅を続ける姉弟と、途中で出会うネイティブの少年は、それぞれがもといたコミュニティに回帰するというゴールは一致しているが、プロセスはまるで違う。姉弟は旅は帰還のための致し方ない手段にすぎないが、少年は旅(ウォークアバウト)そのものが、一回り成長しコミュニティに受け入れられるための目的だ。

よくある展開だと、交流の中で徐々に双方の価値観に変化が芽生え、互いに成長するんだが、姉は少年の求愛ダンスを気味悪がって理解を示そうともしない。

イギリスの都会から来た少女と、オーストラリアのネイティブの少年に、それぞれの文化を記号的に担わせ、交流、衝突による化学反応ではなく、あえて、シンプルに相互不理解とディスコミュニケーションがもたりすボーイミーツガールの不成立というドラマ性にかける展開は、なんだか新鮮で好感が持てる。

ローグ監督流の刀でスパスパ斬って並べたような独特のモンタージュはやや過剰かも。
姉のミニスカ制服姿、湖での全裸遊泳は絶対撮りたかったんだろうな、という意気込みを感じた。
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