寝木裕和

美しき冒険旅行の寝木裕和のレビュー・感想・評価

美しき冒険旅行(1971年製作の映画)
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よく分からないストーリー展開… と言われるけれど、本筋のところはかなり分かりやすく、というよりも本作のテーマが「 文明社会×大自然 」というわりと王道なものなので、難解では決してない。

とは言え、ところどころで「え、なぜそんな展開!?」というところは散見する。

まず冒頭から、わりと裕福な暮らしをしているであろう一家の、父親が娘・息子を連れ立って砂漠へ行き、無理心中しようと彼らに発砲するシーンから、不可解。

けれども大事なのは、そこからその姉弟の砂漠での冒険劇が始まるということ。

そこで出会うアボリジニの少年は、まさに大自然の象徴。
それに対して、都会から迷い込んだ姉妹は文明社会の象徴なのだろう。

たびたび大自然の動植物の動き、太陽や砂漠の風景などが映し出され、そこに都会の文明社会的営みがカットインされ、その二つが対比的に表される。

その中で、ジェニー・アガター演じる姉が湖の中を全裸で泳ぐシーンが長尺で映される。
それはこの作品の肝になっているとも言えるとても美しいシーンで、永遠に観ていられるような場面だ。
つまりニコラス・ローグ監督は文明社会で生きる我々人間も、自然というものが故郷であり、そこに美しく溶けこんでいくのはごく当たり前のことであると表現しているようで。

アボリジニの少年の最期には心が痛いが、このあたりはニコラス・ローグ監督特有のニヒリスティックなセンスを感じる…。
寝木裕和

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