すずす

夕やけ雲のすずすのネタバレレビュー・内容・結末

夕やけ雲(1956年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

木下恵介の妹で、本作の撮影担当・楠田浩之の妻・楠田芳子のオリジナル脚本によるホームドラマ。魚屋一家のドラマを通して、長男の青春の終わりを描きます。

以下は物語。

魚屋の息子が遠くの空を眺めている。一息ついて、魚屋へ戻る。

回想。

洋一の家は馬込の外れ、路地で魚を売りながら、仕出しの仕事もしている。父(東野英治郎)と母(望月優子)、小学生の妹そして幼い弟、そして長女の豊子(久我美子)の5人暮らし。姉は金持ちとの結婚する為、恋人の父が事業に失敗した途端、その恋人(田村高史)との結婚を破棄する。

洋一は家の窓から双眼鏡で見つけた美容院の美女を眺めるのが好きだった。それは彼にとって癒しの時間なのだ。
仕出しの仕事が上手くいかない父は、大阪でクリーニング屋として成功している、オジさんから小学生の娘を養女に欲しいと頼まれているが、洋一も母も反対している。

姉の豊子は50過ぎのバツイチ男と結婚すると言い出し、結婚相手の親族には貧しい魚屋の娘という事は内密にすると言う。父は怒り出すが、以前から悪かった心臓に障り、病に伏せってしまう。

洋一がお金持ちの友人・原田君に、双眼鏡で見つけた美女の話をすると、彼は探しに行こうと言う。2人は美容院ミチルを見つけると、美女が嫁いでいくその時だった。

豊子が結婚式に花嫁衣装で家に寄る時、振られた恋人が現れ、豊子の頬に張り手を浴びせる。
豊子が元の恋人と箱根にしけ込んだ翌日、亭主からのクレームの電話に対して、父が切れて怒鳴り散らした挙句、倒れ帰らぬ人となる。
母は仕方なく妹を大阪に養女に出すことにする。オジさんに手を引かれていく妹を見送り、必ず迎え行くと誓う洋一。友人の原田君の家に行くと、彼も数日後に引越しで北海道に旅立つと聞かされる。洋一は夢を諦め、魚屋を継ぐと原田君に告げるのだった。

現在。今や繁盛店となった洋一の魚屋。姉は相変わらずだが、逞しくなった洋一が夕やけ空を眺めていた------

面白くない理由は概ね脚本にある。
少年の成長というありがちな主題を、凡庸な家族劇仕立てで語る為、頗る映画的ではなく、なら一層、瑣末なドラマを丁寧に描けば良いのだが、ドラマチックにしたいが為、父に戦争や政府に対する不満を言わせる等、その場凌ぎの付け焼き刃的なエピソードでお茶を濁す羽目になっているからだ。
未だミニマリズムの無い昭和の松竹プログラムピクチャーと言え、お粗末なドラマ作り。

そもそも「夕やけ空」は青春の終わりのシンボルでもないし、企画自体がピンぼけている気もする。
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