yawara

たそがれ清兵衛のyawaraのレビュー・感想・評価

たそがれ清兵衛(2002年製作の映画)
4.1
妻を亡くした貧しい武士の生真面目で不器用な生き方を、さまざまな側面から描き出す。

山田洋次監督の当シリーズを通してみると、リアリティのある絵作り、しっかりとした時代考証によって説得力が非常に高い。
武士のハイコンテクストな社会や、ヒエラルキーの中での苦労などがキャラクターにうまく統合され、それぞれがしっかりと生きている。ユーモアのセンスがよく、愛着も持ちやすい。
極力BGMを使わないなど、音響面では言葉と生活音に重きを置いているのもリアリティの追求ゆえか。今作ではその音も含め、清兵衛が小太刀を研ぐ姿がたいへん印象に残る。

彼が強敵との果たし合いを前にして心のなかに、静かにではあるが強い火を灯すのを感じ、ぐっと気持ちが入り込んだ。初恋と剣術にかける二つの思いの、物語上のシンクロがとても美しい。
ひとつひとつのシーンのリズム感もとてもよく気持ちがいい。全体を通してもやはり緩急については練りがよく、そこが見やすさと没入感に一役買っているように感じた。
yawara

yawara