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たそがれ清兵衛のmiporingoのレビュー・感想・評価

たそがれ清兵衛(2002年製作の映画)
4.2
真田広之と田中泯の殺陣シーンが大きな見どころ。この作品は舞踏家の田中泯が俳優デビューした作品だそうで、真田の身のこなしはもちろん鍛え上げられたものであって素晴らしいのだけれど、田中泯のそれは、最後の息絶えるシーンまで、ほんとうに現代舞踊を見ているような緊張感と美しさを感じさせる。静かな迫力と殺気がすごい。田中泯をキャスティングした人、グッドジョブですね。
このシーンを見どころにしていながらも、上司からの命令で望まぬ果し合いすることの虚しさも同時に伝たわってくる。武士道とか侍魂を美化していないところがこの作品の好きなところ。
ほんとうに真田広之が大事にしていたのは、お役でも出世でもなく、子どもたちの成長を見守ること。宮沢りえが子どもたちと隣室で涼やかな声で遊んでいるのを、禄高が少なく借金だらけで貧しい下級武士の真田広之が土間で内職をしながら優しそうな微笑みをうかべて眺めているところなどは、秀逸でした。
岸恵子さんの語りとエピローグもとてもよくて、泣いてしまった。
山田洋二監督の藤沢周平三部作の中で、いちばん好きかも。
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