ユウ

たそがれ清兵衛のユウのレビュー・感想・評価

たそがれ清兵衛(2002年製作の映画)
5.0
言わずと知れた巨匠、藤沢周平の作品、たそがれ清兵衛の実写映画。
戦うことが決まった時には、勝負がついているという、達人同士の決闘を地で行く映画。

ストーリー上は、たそがれ清兵衛と竹光始末を合わせたような内容。まあ、この二つはそもそもほとんど同じ話なのだが。

タイトルにもなっている主人公の清兵衛は、午後5時を迎えると直帰する、いわゆる定時直帰マン。
そのため同僚からは聞こえよがしにたそがれ殿とあだ名され、鼻つまみものと馬鹿にされる。彼には病に伏した母がおり、母の介護のために仕事もそこそこと帰宅するのだ。
そして、剣においては滅法強い。
だが、時は天下泰平、剣技が日の目をみることは早々ない。そうしてうだつの上がらない日々を送る清兵衛。

そんな中で、武勇好みの上様から、とある使い手を始末せよとの勅命が清兵衛に下る。その命をなせば、母はどれだけ楽になれるか、推し量るまでもなかった。
そして、使い手を討ち足るは使い手のみ。すなわち、刺客に抜躍された清兵衛の剣技が公となったわけだ。彼をたそがれ殿と疎んじていた同僚から向けられる目は、軽蔑から畏怖へと変ずる。
だが、やはり距離の遠さは変わらない。
言うなれば馬の耳に念仏が、触らぬ神に祟りなしとなっただけだった。

件の誅殺相手は、清兵衛とほとんど立場が変わらないお仁であった。
清兵衛は彼を殺しに行ったが、すんでのところで逃げられたという三文芝居を演じようとする。
接触後、すぐお互いに打ち解け、見逃す芝居の段取りも決まったはずが、「侍であるならば武勇によって身を示すべし」(勝てば不問に処すということ)との上様の意向を知ってしまい、相手は刀に手を伸ばす。

上様の手打にせよとのお達しと、その相手を斬りたくはないという葛藤、だが見逃せば自分の家族が危うくなる未来。
そして、その事情が差し挟まれない相手の覚悟。
これらは全て、悲しく、そして当然の帰結を迎える。


全体的に纏まりがよく、藤沢周平らしさもよくでている作品。
ただ、一つだけ全編を通して画面が暗めであり、それにより雰囲気は出ているが、そもそも見づらいという側面がある。
しかし、熱心な藤沢ファンである私には、それを理由に減点という傍若は出来かねる。スコアは五点満点だ。


ちなみに英題はThe twilight samurai。
いや、その訳はおかしい!間違いではないが納得できない!
ユウ

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