言わずと知れた巨匠、藤沢周平の作品、たそがれ清兵衛の実写映画。
戦うことが決まった時には、勝負がついているという、達人同士の決闘を地で行く映画。
ストーリー上は、たそがれ清兵衛と竹光始末を合わせたような内容。まあ、この二つはそもそもほとんど同じ話なのだが。
タイトルにもなっている主人公の清兵衛は、午後5時を迎えると直帰する、いわゆる定時直帰マン。
そのため同僚からは聞こえよがしにたそがれ殿とあだ名され、鼻つまみものと馬鹿にされる。彼には病に伏した母がおり、母の介護のために仕事もそこそこと帰宅するのだ。
そして、剣においては滅法強い。
だが、時は天下泰平、剣技が日の目をみることは早々ない。そうしてうだつの上がらない日々を送る清兵衛。
そんな中で、武勇好みの上様から、とある使い手を始末せよとの勅命が清兵衛に下る。その命をなせば、母はどれだけ楽になれるか、推し量るまでもなかった。
そして、使い手を討ち足るは使い手のみ。すなわち、刺客に抜躍された清兵衛の剣技が公となったわけだ。彼をたそがれ殿と疎んじていた同僚から向けられる目は、軽蔑から畏怖へと変ずる。
だが、やはり距離の遠さは変わらない。
言うなれば馬の耳に念仏が、触らぬ神に祟りなしとなっただけだった。
件の誅殺相手は、清兵衛とほとんど立場が変わらないお仁であった。
清兵衛は彼を殺しに行ったが、すんでのところで逃げられたという三文芝居を演じようとする。
接触後、すぐお互いに打ち解け、見逃す芝居の段取りも決まったはずが、「侍であるならば武勇によって身を示すべし」(勝てば不問に処すということ)との上様の意向を知ってしまい、相手は刀に手を伸ばす。
上様の手打にせよとのお達しと、その相手を斬りたくはないという葛藤、だが見逃せば自分の家族が危うくなる未来。
そして、その事情が差し挟まれない相手の覚悟。
これらは全て、悲しく、そして当然の帰結を迎える。
全体的に纏まりがよく、藤沢周平らしさもよくでている作品。
ただ、一つだけ全編を通して画面が暗めであり、それにより雰囲気は出ているが、そもそも見づらいという側面がある。
しかし、熱心な藤沢ファンである私には、それを理由に減点という傍若は出来かねる。スコアは五点満点だ。
ちなみに英題はThe twilight samurai。
いや、その訳はおかしい!間違いではないが納得できない!