てる

たそがれ清兵衛のてるのレビュー・感想・評価

たそがれ清兵衛(2002年製作の映画)
4.7
好きな映画であるのに、あらすじを聞かれて答えられなかった。これは観なければならない。最後に観たのは10年ほど前だっただろうか。その為、新鮮な気持ちで観ることができた。
やはり面白い。キャストがいい。時代劇三部作の中でこの作品のキャストが一番様になっている。特に真田広之。時代劇の殺陣をやらせたらやはりこの人の右に出るものはいない。木刀を振っている姿を見ると、本当にこの人は強いんだろうなぁと思わせてくれる。そういう人でないと剣の名手の役は演じることは出来ないだろう。あと、普通にイケメン。イケメンでイクメンで謙虚だけど、剣の達人って、全てが揃ってる。そりゃ、宮沢りえも嫁にいきたいと思うよね。宮沢りえも良かった。大和撫子ってこういう人のことを言うんだね。お着物が似合うこと似合うこと。艶やかでいらした。この二人のツーショットは眼福でした。本当の夫婦なら良かったのにと思ってしまう。
そして、田中泯。この人との最後の殺陣は良かった。眼光が鋭い。この人もまた、本当に強いんだろうと思わせる迫力があった。驚きなのはこれが映画初出演だということ。重々しい芝居だと思ったけど、ほぼ初芝居なんて信じられない。さすが、ダンサー。勘がいいのだろう。殺陣が上手いのも頷ける。
今回は役者がいいというだけではない。話の内容もいい。たそがれなんていう不名誉な渾名をつけられ、陰口を叩かれていた男が実は剣の名手ってここだけでも熱い。それだけではなく、この男は娘たちの成長が一番の喜びであるという、慎ましい人柄であり、剣の名手だけどもそれをひけらかすようなことを決してしない謙虚さもある。そんな男に舞い込んだ試練。その試練を見事達成し、幸せを掴んだ。エピローグで彼の最後を語られるが、それだけ聞くと必ずしもハッピーエンドとは言えない。でも、ボロボロで帰ったあの瞬間は確かに幸せだった。実際はその死に様も不幸ではなかったと語られているしね。やっぱりハッピーエンドが一番いい。
清兵衛という人間は、頑固さはあるものの、男らしいとか、これこそが日本男子って感じでもない。でも、こういう男に憧れる。謙虚であるけども秘めた強さを持っている。それは研鑽を積んだ者にしか手に入らないものだ。それは誰しもが求めるが、そうそう簡単に手に入るものではない。その努力があったからこそ、清兵衛は幸せを勝ち取ることができたのだ。そういういざというときに勝てるように研鑽を積んでおきたいと思わされる。
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