イホウジン

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序のイホウジンのレビュー・感想・評価

3.5
アイデンティティを辛うじて保たせる「利他」

あまりにも虫が良すぎる。
95年版を同時進行で観てる反動かもしれないが、物語に介入するはずのノイズが確信犯的に排除されているように見える。テレビアニメ版に比べればストーリーは整理されより娯楽的な作品となったが、その代償として全体に薄味な展開となってしまったように見える。
一つ言えることは、今作のシンジは「みんなのため」にエヴァに乗ることで自分の存在を確かにしようとしているということだ。自分が何者すらも分からず緩い自殺願望さえあった彼が、最終的に他者のために自分を実在させる存在に至ったことは、この映画最大の成果と言ってもいいだろう。また綾波に人間性が宿り始めるのが、テレビ版に比べてやや早いように思えた。
このように、新劇では旧作に比べて比較的早いスピードで物事が展開しているように見える。それが「破」以降の新しいストーリーに繋がっていくのだろう。このズレを楽しむのもまたエヴァンゲリオンシリーズの醍醐味だ。

とはいえこの映画は結局のところ、アニメ版の焼き回しだ。映像以外に特別真新しいものはほとんどなく、何か固有に興味深い所を述べよと問われると何も言えなくなるような映画ではある。
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