真鍋新一

ロック・アンド・ロール/狂熱のジャズの真鍋新一のレビュー・感想・評価

2.7
ビッグ・バンドはもう古いとばかりにグループを抜け出したベーシストとマネージャーが新しい音楽を求めてニューヨークへ向かう道すがらに郊外の町のダンス・パーティーを覗いてみたら、激しい音楽で爆踊りする若者たちに遭遇。

「ブギーでもジャイヴでもスウィングでもない。キミ、なんだいそのエクササイズは?」
「ロックンロールよ〜ん!!!」

この映画を作ったのはロックンロール世代ではなくて当時の大人なので、ビル・ヘイリー&ヒズ・コメッツを前面に出しつつ、大人向けにロックンロールなる謎の現象をご紹介してしんぜよう…という古臭い作りになっている。こうした傾向はビートルズが映画に出るまで変わらなかったので、むしろ当時の常識を加味しつつ楽しむのがいい。本来ならブームの先導者としてもっとデカい顔をしても許されるはずのアラン・フリードも映画の中では従順なビジネス・パートナー。DJだけあって演技は慣れている感じ。

突然変異のように言われるロックの誕生も、演奏シーンを見ているとお行儀の悪いジャズが進化したのかな…などと思う。アルトとテナーのサックスを持ち替えながら歌うフレディ・ベル&ザ・ベルボーイズがまさにその中間的な存在として、ラテンバンドのトニー・マルティネス楽団とともに大人がロックを受け入れるための緩衝材みたいな役割になっている。あんまり有名な人たちでないだけに演奏シーンは貴重だった。

映画の作りとしては超陳腐。どうしても色恋を絡めないとダメな呪いというか、開始20分で主人公が会ってすぐの若い娘とギャラの交渉をしながら良い仲になるシーンは失笑もの。レビュー映画に徹すれば良いものを、その話を最後まで引っ張るので呆れてしまった。一応クライマックスはテレビ中継も入った大きなコンサートだというのに、会場の外がまったく描かれないまま映画は雑に終了する。
真鍋新一

真鍋新一