Jeffrey

スプリング-春へのJeffreyのレビュー・感想・評価

スプリング-春へ(1986年製作の映画)
3.0
‪「スプリング 春へ」‬

‪冒頭、雪降る湖のショット。

現在イラン、イラク戦争の真っ最中。日本ではイライラ戦争と揶揄された時代。美しく静かな森の中で生活する少年と老人、軍隊に占拠、故郷を思い、孤独な生活。今、ラジオから流れるニュースに2人は喜びを分かち合う…

本作はアボルファズル・ジャリリ監督が1985年に制作した戦争が最も激化した時代に生きる少年と森の番人をする老人との交流を温かく映した秀作で、ファジル国際映画祭審査員特別賞などに輝いた映画で、物語を通して反戦を訴え決して戦争に勝った事を喜んでいるものではない。

そこだけは勘違いして欲しくない…。

少年が衰弱していく模様は見ていて辛いが、子役のメヒディ・アサディの素晴らしい芝居に感動する。

余談だが、どうやら噂によると彼は大人になってから監督のスタッフになっているらしい。

本作は冒頭からすごい美しい映像に引き込まれる。そもそも中東映画なのに雪を見る事があまりないので、すごく良い意味で違和感を感じた。

終始老人の家で流れる国の情報を伝えるラジオニュースが印象的だ。

また少年が夢で見て叫びながら目覚めたり、回想、その空爆の連続描写に圧巻される。

少年が号泣しながら母親に会いたいと老人に懇願する場面は悲しく、この国の子供たちは苦労しているなと思わされる。

とりわけイラン映画の子供の涙っていうのは芝居を通り越している…。

ラスト老人がラジオを片手に2階に上がって子供とハグするシーンは感動的だ。

1980年から88年まで続いたこの戦争の真っ只中で制作された本作は85年作…と言う事は少なからずこの作品が上映されている間、3年間も戦争はまだ続いていたと言うことになる。だがその2年後の1990年には湾岸戦争が始まる…。

そして今もなお中東は混乱しきっている…。

本作を見て思うのはどれほど素晴らしく優れたメッセージ性を持った映画を作っても、止めることができない人間の破壊欲動…の恐ろしさを感じれる。‬


‪さて、物語はイラン・イラク戦争の最中、少年ハメドが住んでいた街ボスタンが軍隊に占拠され、森に逃げてきた少年が森番の老人に面倒を見てもらう。両親が残っている故郷を思いながら、沈みがちな少年を何とか元気付けようとする老人、徐々に森の暮らしにも慣れ2人は心を通わせていく…

全体的に視覚から寒い印象を与える寒色系の映像が印象的だ‪が、回想を入れ過ぎてる感は否めない‬
Jeffrey

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