マンキウィッツの書く台詞とか、その言葉の使いかたはすごくシニックでドライ、そしてすごく面白いのだけれど、このひとは本屋じゃなくて、やっぱ演出家だわーというのがすごくわかる傑作。
小道具の使い方、鏡や絵や窓、そしてジーン・ティアニーが“フォーレターワーズ”をタイプライターの音でやるとか、もうあの手この手で楽しませてくれる。
幽霊が出てくる映画のキモは、やっぱり「出てくる」ところと「消える」ところだが、いちいち洒落ている。はい幽霊が消えました、ってなって、窓際のカーテンが揺れる演出なんて掃いて捨てるほどあるが、カメラの置き所がいいので、自然と「あ、いなくなった」となる。あとバーナード・ハーマンのスコアがとにかく素晴らしい。そんなもんで、触れることができなかった手をにぎるショットを見たら、思わずほろりとしてしまった。
とにかく、デミ・ムーア出演の『ゴースト』より100倍泣けるし、松嶋菜々子主演の『ゴースト』の600万倍面白い。だからジーン・ティアニーはエロティックなところを見せようとやっきになって、ろくろを回したりは、しない。