垂直落下式サミング

ドラミちゃん 青いストローハットの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

3.5
22世紀の銀座。街中を歩いていたドラミは、カカシ型ロボット・クロウを見かける。彼の忘れ物を見つけたドラミは、彼を追って奇妙な家へ入るとそのまま異世界へと迷い込んでしまう。
ドラえもんシリーズにしては、未来や過去ではなく異世界を扱っているのが珍しい。身分不相応の恋をしたロボットの奇妙な冒険。アドベンチャー色の強い『夢幻三剣士』の併映だからかな。
整合性がとれていないようなファンタジックで不思議な物語なのだけれど、僕のなかにはハッキリとした解答がある。
最初に道行く人のセリフで、「ねえ、映画でも観に行かない?」とトーキョーギンザに映画を観に来ているとわざわざ説明する。ギンザと言えば丸ノ内TOHOってわけ。
つまり、これはドラミちゃんのみた映画ってことなんだと解釈していた。22世紀の映画は、自分が意識ごと物語の世界に入り込んで体感するものになっているんじゃないかな。だから、最初にドラミちゃんがみている広場の時計がラストでもう一度映ると、20分くらい進んでいる。ちょうど、この作品の長さと同じくらい。
このとき彼女は、映画館から出てきて余韻に浸ってる状態だとすると、ワンシーンをちょっと思い出してクスッと笑ってその場をあとにするラストに、ノスタルジックなエモさが加わる。
それに、ドラミとクロウが急にお互いに惹かれあっているような雰囲気になるラストや、お友だちになったはずなのに結局わかれてんのもだし、異世界に行って帰ってきた時間の短さだって不自然。だから、これ全部が作り事だったのだとすれば整合性がとれる。
そもそも『夢幻三剣士』の結末が、こういう感じだから、これも似たようなストーリーだと思うんだよな。あれは、不気味な夢が続いていくってよりは、夢から現実へと向かっていくラストだと思うから、僕としてはSFとして理におちるように解釈したい。
未来の映画館。もしかしら、スクリーンでの上映なんて必要なくて、脳波にカチッとチャンネル合わせて、ヘッドホンとVRゴーグル装着して椅子に座ったら、行ってらっしゃいみたいな…スクリーンに映すなんてのはアンティーク趣味あつかいかも。
こんな小作に考察というか妄想を膨らませられた子供のころの想像力もたいしたもんだな、と。