ちろる

この子の七つのお祝にのちろるのレビュー・感想・評価

この子の七つのお祝に(1982年製作の映画)
3.6
残虐な連続殺人事件に潜むのは、悲しみに取り憑かれた女の情念。

薄暗い汚れたアパートの小部屋で、母、真弓は幼い娘の麻矢に「お父さんは私達を捨てた悪い人。恨みなさい、憎みなさい。大きくなったら必ず仕返しをしなさい。絶対に許しては駄目。」と毎日毎晩教え込み、虐待していた。

いろんな日本のホラーの形があるが、
この作品で岸田今日子様が暗闇で「殺してやる」呟きながら針を刺すシーンほど怖いものはないと思う。
この岸田さんレベルの女優さんはなかなか後に続いてないからほんと改めて日本映画の宝的存在だったんだなと実感。

35年後に起こる連続殺人事件の犯人が一体誰なのか?はほぼ最初の方で分かるし、なぜ?そのようなことになるのか?の答えも既に解明されているためミステリー色は意外と少なめ。

真矢が一体全体どのような感情を持ってこの35年間を生きてきたのかという部分に重点が置かれる。
ちなみに真矢と並ぶこの作品においての主役はルポライターである根津甚八さん演じる須藤なのだろうが、真矢を演じた岩下志麻さんのお美しさが圧倒的すぎて・・・たまに須藤の存在忘れかけちゃう。
ちなみに分からなかったのは青蛾と真矢のただならぬ関係について・・・
そこは詳しく描かれてないけど、普通あそこまで尽くすか?
わたしにそこに一種の同性愛的な深い愛のカタチがあるのでは?と勝手に勘繰りたくなっちゃいました。
あと、ほんと罪のない人が殺されすぎ。
同情に値する生い立ちではあるものの、罪に関しては如何ともし難い。
皆が不幸になり、カタルシス全く感じられないラストにただただ呆然とさせられる容赦ない物語でした。
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