Ricola

ゴースト・ドッグのRicolaのレビュー・感想・評価

ゴースト・ドッグ(1999年製作の映画)
3.6
日本および武士道に傾倒する殺し屋の男。彼はどこかの組織に属することはないが、イタリア系のマフィアの幹部のひとりから殺しを依頼されている。
彼とはまさに「御恩と奉公」の関係で結ばれているのだ。

武士道を貫く男の生きざまが、マフィアのあり方と対比的に描かれる。また、彼の日常や友情も見どころの一つである。


武士道に関する本を読み、漢字がプリントされた服を着ており、武士道および日本文化オタクなことがよくわかる。
武士道のあり方を語る文章がシーンの節目に挿入される。そしてその「掟」に沿って行動していることが示されるのだ。

主人公の「ゴースト・ドッグ」は、銃の名手である。背後からの気配も瞬時に察知して敵をとらえるのだ。ただ、街中や敵のアジトなどは建物の影などに身を潜めることができる。その一方で、彼が伝書鳩を飼っている屋上では無防備である。隠れる場所などほとんどなく、身一つと銃しかないからである。この、周囲に盾となるものがない環境というのは、西部劇およびクロサワ映画の決闘のシーンのようではないだろうか。

一方のマフィアの男たちが、この作品のコメディ要素となりうることがある。
子供が窓から投げてくるおもちゃやゴースト・ドッグの送ってきた伝書鳩に極端にビビるなど、マヌケな一面を見せるのだ。
また彼らは、武士道を信念とするゴースト・ドッグとは全く異なる。
彼らに共通しているのは猫のフェリックスのアニメを観ることだ。フェリックスは感情のままに何がなんでも敵をぶちのめす。
その姿勢はマフィアの彼らに通ずるところがあるように感じる。

ゴースト・ドッグは普段、「普通」の人として生活している。アイスクリーム屋のフランス語しか話せない男性や読書家の少女との交流を通じて、彼の人となりが表されている。物静かだが優しく、情に厚いのだ。

現代のニューヨークにサムライがいたならば…という設定なので、日本映画オタクであることを押し出すわけでもなく、ジム・ジャームッシュの世界観にそれを落とし込んで馴染ませた作品、という印象を受けた。
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