チッコーネ

関東無宿のチッコーネのレビュー・感想・評価

関東無宿(1963年製作の映画)
2.7
デビューから数十本を撮った監督が、作品全体のコントロールに必要な権力と自我を手中にしつつある、といった趣。
いわゆる日活アイドルアクション作品群の中でも「キラリと光る手腕」を確認可能といったレベルから、独自の作風へとシフトチェンジしている…、好みの分かれるところだが、個人的には成長中、実験中な作風のほうが好きだった(『殺しの烙印』は例外)。
何しろ本作は、小林旭というダイヤモンドラインの一角を捕まえ「衰退の一途を辿る、ヤクザ組の若い衆」という惨めなキャラクターをあてがっている。
まるで末期を迎えた西部劇の亜流作品を先取りするかのような諦念が覆う中、辛うじて「追い込まれたヤクザの矜持」は感じられるものの、全体はどんより暗い。
おまけにヒロイン担当の松原智恵子を脇へ押しやり(冒頭の女子高生三人組カットバックは楽しい)、華のない伊藤弘子が演じる女詐欺師に「経年の劣情を抱く」という熟女嗜好まで与えている…、この辺りには当時の日活が「20代後半~30代の専属女優を確保できていない」という弱味も露呈していた(せめて稲野和子を登用してほしかった)。

夕焼けでキラキラ光る川を背景にした小林旭を写すカットはハッとするほど美しいなど、絵心に溢れた場面は随所に登場。
また照明も意識的にカラフル。
本作はデジタルリマスターが施されているのか、画面もかなりクリアだった。