滝和也

関東無宿の滝和也のレビュー・感想・評価

関東無宿(1963年製作の映画)
3.6
渡り鳥シリーズの
小林旭が奇才鈴木清順と
組んだ任侠メロドラマ!

どうせ、あたしの行く道は
赤き着物か、白き着物…

「関東無宿」

もはや化学反応ですね…。アヴァンギャルドな清順美学、正統派任侠のキャラクターに昼ドラ並みのメロドラマが噛み合うと言う…東映任侠路線からしたら、ある意味、ゲテモノ。もちろん良い意味ですがね(^^)

新勢力吉田組に圧され、落ち目の伊豆組の屋台骨を支える勝田(小林旭)。義理堅く筋道を通す勝田だが、吉田組のチンピラの姉(伊藤弘子)と出会ってしまう。彼女は数年前に出会い、一目惚れしたペテン師だった…。

人妻である彼女とのなさぬ仲、そして渡世の義理から堕ちていく男の哀愁を描く佳作でした。やはりテクニカラーの原色の冴えを活かした撮影、工夫された構図、演出が素晴らしい。

白と黒の賭場、賭場荒らしが乗り込み、対決する中盆を努める勝田。長ドスの一撃でよろめくチンピラが襖にあたり、倒れた瞬間に広がる赤い世界。そして雪の白さと赤い提灯、青い部屋と続く殴り込みシーンへと繋がる清順の色彩の美学。

他にも原色を画面に配すテクニカラーを活かす演出で飽きさせないのですが…やや脚本が散漫で盛り上がりには欠けます。清順のチームによる脚本ではないですし。
また東映任侠をイメージして入ると肩透かしを喰らいます。義理人情がなくなりつつある現代を舞台にしてますし、現代を象徴した様な女性が出てきますから。花子さん(中原早苗)のブッ飛んだキャラに振り回されます。中盤は空気ですが(笑)
苦手のメロドラマがメインに添えられているのも、入り込みにくい要因かもしれませんが…。

小林旭だけが格好良く、義理人情を通すんですが、ある意味、道化。その道化の悲しさがヤクザ渡世の哀しさを表しています。また旦那役の花札いかさま師、おかる八役に怪優伊藤雄之助が特別出演していますが、その怪しさ、迫力は流石でした。

松原智恵子さんが出ていてヒロインかと思ってたんですが…残念ながら出番は本筋には絡まず残念。美しさは凄いんですけどね…。

この作品での任侠路線が後の刺青一代で完成形になってます。その撮影、演出、脚本含め完成度が高いのはやはり刺青一代の方。今作がプロトタイプなんでしょうね。
滝和也

滝和也