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大誘拐 RAINBOW KIDSのCANACOのレビュー・感想・評価

大誘拐 RAINBOW KIDS(1991年製作の映画)
4.0
1991年公開の岡本喜八監督・脚色作品。天藤真氏の同名小説が原作。原作は日本推理作家協会賞を受賞。週刊文春ミステリーベスト10(20世紀国内部門)第1位を獲得。原作が刊行されたのは1978年。

窃盗・スリの前科があるが心根は悪くなく、少し抜けている若者3人組が、人生を立て直すために紀州の大富豪で篤志家である、80歳超のおばあちゃん・柳川とし刀自(とじ)の営利誘拐を企てる物語。

この物語が面白いのは、3人組が秒でこの柳川としにイニシアチブを取られ、誘拐計画自体が“おばあちゃん主導”になり、5000万円の予定だった身代金を100億円に変更されるところ。

身代金50万円の吉展ちゃん誘拐殺人事件が起きたのが1963年。3億円事件が起こったのが1968年、3億円の身代金を扱った渡哲也さん主演の『誘拐』が公開されたのが1997年。その時代背景で、1978年-1991年に100億円の身代金を要求する設定も派手。

ほぼオールスターキャストなのも見どころ。若者チームのボスは風間トオル。和歌山県本部長は緒形拳、その下についているのが竜雷太、橋本功、常田富士男、嶋田久作。柳川家サイドには天本英世、神山繁、水野久美、岸部一徳がいて、長年としに仕えていた女中頭役が樹木希林。その他も知っている役者さんばかりで豪華。

名役者揃いにもかかわらず燦然と輝くのが、“老け役”女優で知られた北林谷栄(たにえ)さんで、役の年齢と同じ80歳頃に演じた柳川とし刀自がとにかくいい。「獅子の風格と、狐の抜け目なさと、それにパンダの親しさを兼ね備えた」キャラクターそのまま。本作が北林さんの演技キャリアのほぼ集大成なんじゃないかと勝手に思うほどよい。

胸糞感ゼロ。豪快な娯楽作として今でも楽しめる良作。

高齢女性の尊称として使われる「刀自(とじ)」という言葉を覚えるきっかけになる作品でもある(普段聞いたことないけど)。元々は家事をつかさどる主婦という意味で、「戸主」の当て字らしい。



□メモ
井狩本部長は、家庭に恵まれず、進学の望みがなかったのを、柳川としにより、柳川家の篤志育英資金を出してもらい大学(東大)に進学。しかし入試で3浪、進学してからも3留した。にもかかわらず見捨てず、卒業させてくれたという設定。
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